達人の館

   本物の芸をじっくりと味う、大人のためのコンサートを企画・主催しています。

我が家にある往年の名歌手の演奏を聴き直していることは
以前、紹介しましたが、
何度聴きなおしても飽きないのがタリアヴィーニです。
私がこれまでで一番、感銘を受けた歌手をあげるとすれば、
間違いなくこの人です。
初めて人の声の考えられない美しさと
迫力を教えてくれた恩人でもあります。

この19日に「黒田恭一さんを偲ぶ会」が行われましたが、
黒田さんもタリアヴィーニのファンであり、
高い評価をしていることは10年も後に知ったのです。
もしかするとこの感性の共通が私を認めていただいたのかも知れません。
あの柔らかいソット・ヴォーチェと
響き豊かな迫力あるフォルテシモの使い分けは
ほかの歌手には絶対出来ません。

温かい人柄といい、愛すべき小柄な体型といい
「私はスターだ」という威圧感のないのも魅力でした。
今思えば黒田さんは、どこか雰囲気がタリアヴィーニに
そっくりだったように思います。

仕事とスケジュールが重なり
「黒田恭一さんを偲ぶ会」には参加できなかった私ですが、
天国でタリアヴィーニと再会している黒田さんを想像して
うらやましく思ったりしています。
今宵もタリアヴィーニの声を聴いて黒田さんを偲びます。

(音楽・演劇プロデューサー  橘市郎)

少し前になりますが大阪のいずみホールで「日欧艶男合戦記」という
光源氏とドン・ジョヴァンニを対比したパフォーマンスを見に行きました。
桂春團治さんの語りとオペラの抜粋をアレンジしたものですが、
部で親しい作曲家尾上和彦さんの作品が披露されることから
尾上さんからご招待されたのでした。
部は、かなりお笑いの要素が見られましたが、
オペラ「月の影」を扱った第部はほとんどシリアスに扱われ
オペラ・ハイライトといった感じでした。

指揮の阪哲朗さんも演奏のアンサンブルもさすがでしたし、
部出演の歌手たちもしっかりした歌唱を聴かせてくれました。
衣装にしても本格的で本公演に劣らない豪華さだったと思います。
尾上さんのオペラは日本物といえど
ベルカント・オペラ並の声が要求されるので、
アリアともなると歌手の力量が極めて出来を左右してくるのです。
そういう意味でもレベルの高い公演でした。

ここでは字幕が使われていましたが、
和歌を引用したアリアなども内容が伝わり有効でした。
改めてアリアの中には耳に残るメロディーも多く、
これからも繰り返し上演していくことによって
「夕鶴」以上に親しまれる日本物オペラとなる可能性を感じました。

尾上和彦さんは私と同じく細身。
しかも大病と戦いながら不屈の精神で作品を創り続けています。
尾上さんの活動が若い世代の人々に
うまく引き継がれていくことを切に願っています。
今度またゆっくりお目にかかりたいと思います。

(音楽・演劇プロデューサー 橘市郎)

 

 

 

 

112日は春秋座のプロデューサー・舘野佳嗣さんから
表記のミュージカルにご招待いただきました。
この原作はかつて市村正親さん主演の一人ミュージカルとして
春秋座で公演されているので懐かしさもあり喜んで出かけました。

ところが今回の作品はシチュエーションこそ同じでしたが
演出も、音楽も全く新しいもので別の作品だったのです。
特に違っていたのは音楽で、
全編、中村匡宏さんのピアノを生かしたオリジナルでした。

中村さんは鍵盤男子としてもピアノを弾き、語り手までやっていました。
もうおひとりの鍵盤男子・大井健さんも台詞をこなしていたし、
ミュージシャンがここまで多才かと感心してしまいました。
もちろん主役の元宝塚北翔海莉さんも熱演で
この3人のアンサンブルは見事というほかありませんでした。

筋立てがしっかりしていたので主人公が
最後に住み慣れた船とともに運命を共にするくだりも説得力がありました。
市村さんが主役を演じていた「海の上のピアニスト」のストーリーが
曖昧に記憶されていたのに対し、今回はっきりとしたのが収穫でした。
それにしても才能のある若いミュージシャンが
これからどんどんでてくるのは頼もしいですね。

舘野さんは宝塚とのコネクションを持っている貴重な方、
春秋座でこそ可能な元宝ジェンヌのパフォーマンスを
これからも実現していって欲しいものです。
休憩無しで約1時間半という上演時間も良かったと思います。
上演台本・演出の星田良子さんの功績も
大きかったことはいうまでもありません。

(音楽・演劇プロデューサー  橘市郎)



1026(土)、50年ぶりに田辺国武さんという
現在は演出家として活躍されている方に京都駅近くの喫茶店で再会しました。
田辺さんは偶然、数ヶ月前にこのブログを見て連絡してきてくれたのです。
50年前、田辺さんは劇団「若草」という主に子役を養成し、
マネージメントするプロダクションの先生であり、スタッフでもありました。
日劇という劇場で子役が必要になると連絡して
お世話になるというお付き合いが続いていました。
私が東宝を辞めた後も子役といえば田辺さんだったのです。
しかし、子役が必要な仕事がなくなるとともに、
いつしか疎遠になっていったようです。

田辺さんは長い間、「金子 みすゞ世界」に興味を持ち、
彼の演出作品にはその傾向が非常に強いことが伺えます。
東京、四国、富山などで行われる公演にぜひ注目してあげて下さい。
伊勢丹の入り口で待ち合わせた二人は、お互いに分かるかどうか不安でしたが、
一目見て昔とほとんど変わっていない姿にびっくりしました。

田辺さんは私の病み上がりの状態を心配されていましたが、
ひとりで立っているのに安心したようです。
それから約1時間、お互いのその後を報告したり、
現在の状況を語り合いました。
短い時間とはいえ懐かしさがどんどん蘇ってきました。
5歳年下の田辺さんは元気そのもの、
健康に気をつけられ体重も大分絞ったようです。

奈良の公演先に戻られるということで近鉄の改札口までお送りしましたが
今度はぜひ東京でお会いしたいと思いました。
田辺さん、元気をいただきましてありがとうございました。
これからもぜひ良い仕事をされてください。益々のご活躍を祈っています。


(音楽・演劇プロデューサー 橘市郎)


ラグビーのワールドカップで、日本は4強にはなれなかったものの
大いに日本全国を元気にしてくれました。
私は正直今までラグビーの試合を見たことがありませんでした。
今回初めて周りのムードに押されて、テレビ中継を見たのです。

まず驚いたのは体格のいい選手達が激しくぶつかり合い、
ゴールに突進する迫力でした。
肉体同士が激突するといえば相撲がありますが、
スクラムを組んで一つの変形ボールを奪い合うというのは
ラグビーしかありませんね。
人間には闘争本能がありますが、
それをスポーツと言うルールをもとにした試合
で発散させることを考えた人は偉いと思います。

激突しあった選手達が試合が終わって、
お互いの奮闘振りを笑顔で讃えあう姿は本当に感動的でした。
カナダ・チームの選手たちは
水害で泥水に浸かった滞在地の後片付けを手伝ってくれました。
「大男、気は優しくて力持ち」と言う言葉がありますが
絵に書いたような出来事だと思います。

「スクラムを組む」ということが
連帯意識を高めるという意味に通じることも、
今回のラグビーで痛いほど分かりました。
今回のラグビーを見るにつけ、人間同士が殺しあう戦争が
如何に智恵のない愚かなことかをつくづく思いました。
そして、どのスポーツも多かれ少なかれ
人間の闘争本能をうまく昇華させてくれている
素晴らしいものであるかを再確認しました。

スポーツ万歳!

(音楽・演劇プロデューサー 橘市郎)

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