一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

6月4日、青山音楽記念館で行われた
「ソプラノ 川越塔子リサイタル」が無事終わりました。
たった1日1回の公演ながら半年間かけていただけに、
ほっとしたやら、寂しいやらいつもどおりの複雑な気持ちです。
客席は結局60パーセントの入りでしたが
厳選されたお客様といった感じで、とてもいい雰囲気でした。

フランス・オペラから始まったのですが、
川越さんも細川さんも白い衣装で登場。
お二人とも美形なのでサロン風な華やかな幕開きでした。
川越さんの澄んだ声が響き渡り、会場全体が共鳴箱のようです。
大きなホールでは味わえない舞台と客席が
一体となった感じかとても新鮮でした。

1部では、お客様を飽きさせないように、
プラカードや風船を使ってのコミカルな演出が笑いを誘いました。
川越さん自身が考えたことですが、
ただ好きな歌を歌えばいいというのではなく、
お客様を楽しませようという心遣いが伺えました。
2部は一変して着物姿で登場。
「夕鶴」のおつうが与ひょうを思う心を切々と歌い、
「蝶々夫人」のアリア「ある晴れた日に」繋げていきます。
確かにこの曲は心情的に共通するものがあり、
川越さんの感性には脱帽です。
そして、蝶々さんが自害する直前に歌う「可愛い坊や」。
迫真の表情で歌う川越さんと蝶々さんの姿がだぶり
思わず涙がこぼれました。
夜、初めてオペラのアリアを聴いたという女性から
メールをもらいましたが、その方も涙が溢れたそうです。

この日は青山財団の田中理事長はじめ、
耳の肥えた方が大勢お見えになっていましたが、
みなさんからお褒めの言葉をいただきました。
単に外交辞令で言っていただいているのか、
心から言っていただいているのかは職業柄解ります。
満員には出来ませんでしたが、
本物の達人を紹介出来て良かったと思います。

桂川を越えて来て下さった京都のお客様。
東京、大阪、宮崎からはるばるお越しくださったお客様。
そして会館のスタッフの方々、ありがとうございました。
川越塔子さん、細川智美さん、本当にお疲れ様でした。
お二人とはまたご一緒したいと思います。
お二人にとって京都が第の故郷になることを心から願っています。

(達人の館 代表 橘市郎)

9月に春秋座で上演される歌劇『魔笛』の一般前売りが開始されました。
春秋座オペラは今回で8回目になりますが、
歌舞伎劇場の機構を活用した独特な演出で年々注目を集めてきています。
春秋座は3代目市川猿之助さんが初代芸術監督を務められましたが、
初めから歌舞伎とオペラの上演を想定して建てられています。

通常、歌舞伎劇場にオーケストラ・ピットは必要ないのに、
1.8メートルの深さを持つ本格的なピットが備えられています。
この発想は3代目市川猿之助さん(現2代目市川猿翁)が、
パリのシャトレー劇場で歌舞伎の様式を生かしたオペラ『金鶏』を演出して、
大成功を収めたことから生まれました。

私が猿翁さんに声を掛けていただいたのも
オペラ好きだったからだと思っています。
本当は春秋座でオペラの演出をぜひやって欲しかった。
中でも一番やって欲しかったのが『魔笛』です。
荒唐無稽な話ではありますが、猿翁さんなら、
大スペククトラルなオペラにしてくれたと思っています。

今回は三浦安浩さんの演出ですが三浦さんは『椿姫』『カルメン』と過去2回、
春秋座の機構を上手く生かして演出をしてくれたので楽しみです。
指揮の大勝秀也さんは春秋座初登場ですが、
私が信頼している公演監督の松山郁雄さんが
太鼓判を押している方なので安心です。
出演は春秋座最多出演を誇る片桐直樹さんをはじめとする実力者ぞろい、
ベテランとオーデイション組が競い合う舞台は火花が散ることでしょう。

さて、この『魔笛』で初日の<夜の女王>を努めてくれるのが川越塔子さんです。
川越さんはこれまで春秋座で、『夕鶴』のつう、『ラ・ボエーム』のミミ、
『蝶々夫人』の蝶々さん、『椿姫』のヴィオレッタ、
『セヴィリアの理髪師』のロジーナんと5役のヒロインを演じ分けてくれました。
今年はなんとコロラテューラ・ソプラノの大役を演じてくれます。
その川越塔子さんが今度の日曜日、6月4日に
青山音楽記念館でリサイタルを開催いたします。
15時の開演ですが、全編オペラ・アリアという豪華なプログラムです。
当日券もご用意していますので、ぜひお出かけください。
達人の館が自信をもってお届けする「川越え子リサイタル」。
どうぞお見逃しなく!

(達人の館 代表 橘市郎)

6月4日まで一番上に表示いたします
2017_KawagoeToko_A4
全編オペラ・アリアのプログラムでお届けするリサイタルです。
川越塔子さんの繊細な表現を
どうぞじっくりお楽しみください。

日 時 6月4日(日)15:00

入場料(全席自由) 5000円 ※未就学児の入場はご遠慮ください。
会場 青山音楽記念館

チケットのお取り扱い
 達人の館 0758745931 

 青山音楽記念館 075-393-0011

 チケットぴあ

ソプラノ 川越塔子リサイタル」まで後10日となりました。
京都新聞と朝日新聞に記事が出てやっとチケットが動き出しました。
達人の館のコンセプトは、素晴らしい芸を持ちながら、
一般には余り知られていないアーチストを紹介したいというものですから、
放って置いて満員になるなんてことはありません。

一度その芸に接した人が素晴らしさを実感し、
他の方に伝えてくださるいわゆる口コミによって
評価が広がって行くパターンが理想です。

もちろん達人の館が如何に上手く宣伝するかも問われてきます。
本当にいいものを紹介し、満足していただけたたら
こんなにうれしいことはありません。

川越塔子さんは、この年間こつこつと評価を高めてきました。
ある意味では、川越さんはもう知られざる存在を超えています。
よく、おいしいものを勧める時
「騙されたと思って食べてみな!」と言いますが、
川越さんをご存知でない方には正しくそうお伝えしたい心境です。

会場の青山音楽記念館は京都コンサートホールに較べたら
余り知られていませんが、その雰囲気と音の良さでは遜色ありません。
どうか日(日)15時開演の「川越塔子リサイタル」をお忘れなく。

※こちらも併せてお読みください 川越塔子さんの魅力

(達人の館 代表 橘市郎)

少し前になりますが、5月13日にシャンソン『恋心』の作詞で知られる
永田文夫さんの追悼コンサートに行ってきました。
名古屋で活躍しているシャンソン歌手、なかにし陽子さんから
突然電話があり、急に行けなくなったので
ぜひ代わりに行ってほしいと言われたのです。
料金はすでに払っているので
当日、受付に行ってくれればいいということでした。

なかにし陽子さんは一昨年春秋座で行われた
アルゼンチン・タンゴのコンサートでゲスト出演してくれた方です。
「本当は私が行きたいコンサートなんで、
まちがいなく楽しんでいただけると思います」とのことでした。
当日、会場のウェスティン都ホテル京都に行くと会場は超満員。
プログラムを見ると永田文夫さんに縁のある
16人余りの歌手が出演しているので、
シャンソンの好きな方にはこたえられないコンサートだったようです。

しかも、出てくる歌手の方が皆さん個性的で、歌の上手い方ばかりでした。
中でも川島豊という男性歌手は、
容姿も声も抜群で圧倒的な迫力がありました。
休憩の時、その川島さんが私の座っているテーブルに見え
右半分のお客様に挨拶して行きました。
どうも私の右隣のお二人がご両親だったようです。
隣に座っていた男性に「失礼ですが川島豊さんのお父様ですか?」
と話しかけると「はい」という返事が返ってきました。
私はここぞとばかり、息子さんを褒め称え名刺を渡しました。
自己紹介をし「息子さんはクラシックを勉強されていましたね?」
というとお父様は「はい、音楽大学で」とおっしゃいました。
「どちらの?」とたたみかけると
「上野の国立芸大です」という返事が返ってきました。
彼はやはり只者ではなかったのです。

劇団四季に入ったもののすぐ辞めて、
独立独歩この世界で20年余り歌っているようでした。
私の好みの歌手がまた一人現れたようです。
この会にはベテランの瀬間千恵さんも出ていらっしゃいました。
彼女は、私が30代の時に作詞した『パパが残したもの』という曲で、
東京音楽祭の上位5位に入賞したのです。
作曲の筒井広志さんも20年以上前に亡くなり、
瀬間さんとは40年近くお会いしていませんでした。

終演後、会場の出口でお客様を送り出していた瀬間さんに声を掛けたところ、
彼女はすぐ思い出してくれました。
思わぬ再会に、なかにし陽子さんに感謝せずに入られませんでした。
と、そこへ川島豊さんが両親と共に現れ、挨拶を交わすことがで来ました。
これがご縁というものなのですね。
いつの日か川島豊さんとご一緒できる事を楽しみにしていたいと思います。
人生こういう偶然が起きるのが何ともいえないですね。
なかにし陽子さんありがとうございました。
なかにしさんともまた何かごいっしょしたいです。

(達人の館 代表 橘市郎)

 

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