一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

17日、18日、春秋座オペラ「カルメン」が無事終了いたしました。
両日ともほぼ満員の状態で7回目の公演で
1100人を動員することが出来ました。
お陰さまで、出来に関しても概ねのお客様に
ご好評をいただいております。

今回は演出の三浦安浩さんと舞台美術の柴田隆弘さんが
歌舞伎小屋の機構をどう生かそうかと、
大分前から打ち合わせをしていただいた成果が目立ちました。
立体的な舞台装置が回り舞台によって変化していく演出は
稲葉直人さんの照明の力もあって、
春秋座だからこそ可能な迫力あるものでした。

指揮の牧村邦彦さんが9人のオーケストラを特訓してくださり、
エレクトーンとのコラボを見事にまとめてくれたのも大きな成果でした。
まるでフルオーケストラのようなサウンドは
指揮者の技量のお陰と言っても過言ではありません。

出演者も、初日のカルメンを歌ってくれた
藤井泰子さんは、小柄ながら、女優経験を生かした説得力ある歌と
演技で観客の涙を誘ってくれました。
日目の並河寿美さんは、これぞオペラのカルメンという
ひとつの型を見せ付けてくれました。

ドン・ホセの谷口耕平さんはこれが本格的なデビューでしたが、
将来性を感じさせる声で、ひた向きな演技が光りました。
これに対し日目の角田和弘さんは、さすがベテランという感じで、
「花の歌」や終幕の重唱を聴かせてくれました。
カルメンを刺した直後の絶叫は今でも耳に残っています。

エスカミーリョの折江忠道さんほ圧倒的な声量と存在感で
オペラのクオリテイーを高めてくれました。
一方の鶴川勝也さんは、粋でスマートなイメージどおりの闘牛士。

ミカエラの和田しほりさんは声の質が純な役にぴったりで
カルメンとの対比が鮮明。
柴田紗貴子さんは声量豊かなミカエラで
角田さんのドン・ホセとのバランスが絶妙でした。

ほかの役の方もレベルが高く、
誰一人として弱いキャストがいなかったことも、
作品全体を支えてくれたと思います。
コーラスにいたってはこの人数で良くぞ盛り上げてくれたと感激しました。
ひまわり児童合唱団と合わせて果たしてくれた
群衆シーンの迫力は忘れられません。

ともすれば事故も起こりかねない舞台を
安全に進行させてくれた
舞台監督の青木一雄さんをはじめとする演出部の皆さん。
ぎりぎりの予算で効果を上げてくれた衣装の坂井田操さん。
お父さんを支えてくれた演出助手の三浦奈綾さん。
井出亮さん以下制作を担当してくれた舞台芸術研究センターの若手スタッフ。
ミラマーレ・オペラの優秀な女性スタッフ。
大勢の人たちの団結力がこのオペラを成功に導いてくれました。
そして、これらを総合的にまとめ、
引っ張ってきてくれた公演監督の松山郁雄さん、
ありがとうございました。
でも、何よりも春秋座オペラを支えてくれているのは
高額な入場料を払って、劇場に足を運んでくださったお客様です。
来年も春秋座では月に
モーツァルトの歌劇「魔笛」を上演することが決まりました。
ぜひとも来年もご来場くださいますようお願い申し上げます。

公演プロデューサーとして、改めて皆様のご協力に感謝いたします。
ありがとうございました。

(春秋座 顧問プロデューサー/達人の館 代表 橘市郎)

今週末は春秋座でオペラ「カルメン」が上演されます。
春秋座オペラは平成10年より、
毎年1回行われてきて今回が7作目になります。
歌舞伎劇場の機構を生かした独特な演出と
質の高い歌手による競演が注目されてきました。
年々動員力も増し、今回は残席わずかという状況です。

6f44e3_19a8e4be284f414c8117819a0d034090~mv2
注目のカルメン役は、
17日(土)がイタリアから参加してくれた藤井泰子さん
18日(日)が関西出身のプリマドンナ並河寿美さん。
ドン・ホセはオーディションで役を射止めた谷口耕平さん(17日)と
ベテランの角田和弘さん(18日)。
エスカミーリョは藤原歌劇団総監督の折江忠道さん(17日)と
昨年「セヴィリアの理髪師」で好演した鶴川勝也さん(18日)。
ミカエラは和田しほりさん(17日)と柴田紗貴子さん(18日)が演じます。
ほかの役の方も実力者ぞろいで、
充分に稽古を積んだ素晴らしいコーラスの方々と共に
作品のクオリティを高めてくれています。

公演監督を務めてくれている松山郁雄さんとは、
28年前、ミュージカル「イダマンテ」に
コーラスの一員として出演してくれてからのお付き合いです。
私が昭和音楽大学で演奏室長を務めていた時は、
オペラ「愛の妙薬」のドゥルカマーラや
ミュージカル「みどりの天使」の老人役を主演してくれました。

私が昭和音大を定年で辞める1年前に、
オペラを制作する法人を立ち上げたいと
相談を受けたことがあります。
「オペラを制作する法人は大変だと思いますよ」
と言ったのを覚えています。
でも彼は勇敢にもNPO法人ミラマーレ・オペラを立ち上げ、
次々と実績を上げていきました。
持ち前の明るさときちんと約束を守る誠実さが
人を引き付けたのだと思います。

松山さんは、春秋座オペラ作のうち
作を公演監督としてまとめてくれています。
「自分がやりたいものより、お客様に喜んでいただけるものを!」
という心構えはオペラ界に一石を投じたと思います。
今回のオペラも、私と同じ考えを持っている松山さんとだからこそ
実現出来たと感謝しています。
もうすぐ初日を迎えます。
お客様がどんな反応を見せてくださるか、本当に楽しみです。

書き添えますが松山さんはオペラ歌手としては
「松山いくお」で出演しています。
今回は隊長役のズニガ(17日)を片桐直樹(18日)さんと共に演じます。
いろいろなジャンルで鍛えてきた軽妙な演技と
如何にもバスらしい重厚な声で魅了してくれます。
どうぞご注目ください。

karumenf

(
春秋座顧問プロデューサー/達人の館代表 橘市郎)

12月10日(土)14時開演で
江藤ゆう子 昭和を歌う―総集編」が行われます。
会場は、いつものナムホールではなく、
ロームシアター京都 サウスホールです。

60
人しか入らないホールで
日2回公演を6回行ってきたところ、
(
株)プランツ・コーポレーションの武部宏会長が
「サウスホールでやりませんか?」と
お声をかけてくださいました。
武部会長は以前から江藤さんとのお付き合いがあり、
ナムホールでの公演にご招待したことがきっかけでした。

しかし、サウスホールは750のキャパがあり、
小ホールとは違ったつくりをする必要があります。
そのまま持っていくわけには行きません。
武部会長と江藤さんにその旨お伝えしたところ、
お二人とも理解を示してくださいました。
ピアノ本が人編成のバンドとなり、
男声コーラスの客演も仰ぎました。
バンド台、ジョーゼットのアーチ、舞台衣装、照明、音響など
お金のかかる要素が沢山増えました。
お客様にも、武部会長にも多分のご負担をおかけしたと思います。
でも、その結果スケールアップしたステージを
お届けすることが可能になりました。

ナムホールでのコンサートとは、
また一味違うコンサートを
楽しんでいただけると確信いたします。
お陰さまで1階席は完売になりましたが、
2階席が少し残っているようです。
まだ、チケットをお持ちでない方は

(株)プランツ・コーポレーション
℡075-222-7755

にお申し込みください。
9日にナムホールの1階で最後の通し稽古をし、
当日11時からサウスホールで舞台稽古、
そして14時から本番です。
皆様のご来場キャスト、スタッフともお待ち申し上げております。

<達人の館 代表 橘市郎(松山正人)>

 


1129日、法然院で「ドロミズ」の作家
マリオ・アンドレア・ヴァッターニさんを囲む会がありました。
ヴァッターニさんは前イタリア総領事で、
日本に滞在した4年間の印象を小説にしたということです。
作家としては最初の作品ですが、
イタリア人が見た日本の魅力や
不思議な日本人の感性を描いたものでした。

実はこの作品の日本語訳を朗読したのが
春秋座オペラでカルメンを演じる藤井泰子さんだったのです。
「こういう会がありますがいらっしゃいますか?」と
声をかけられてスケジュールを見ると、
1週間でこの日だけが空いていました。
法然院の室内には入ったことがないし、
女優としても活躍している藤井さんが
どんな朗読をするのかも興味があったので、
満席の会に特別に入れていただきました。

法然上人の像の前に藤井さん、翻訳者、講師の方々が
居並ぶ風景はめったに見られないものでした。
藤井さんの朗読は声のトーンを押さえ、
作品に描かれた日本の風景を明瞭に伝えてくれました。
声そのものがいいので心地よく、
独特の世界を作っていたのはさすがです。

会終了後「総領事のお宅で、パーティーがありますので、
同行しましょう。あらかじめ了承してもらっていますので」と
お誘いを受けました。
ずうずしいとは思いつつも
藤井さんのご好意に甘えることにしました。
錚々たる方が50人くらい集まっての交流会。
それでなくともパーティーが苦手の私は隅の方にいると、
藤井さんが、ロンバルディ総領事や
イタリア文化会館館長のフォッサーティさん、
作家のヴァッターニさんに紹介してくれました。
名刺交換する間も、いろいろフォローしてくれたのです。
藤井さんのイタリアにおける存在が
如何に大きいかを知らされました。

「カルメン」がイタリア・オペラだったら、
この人たちに絶大な応援をしてもらえただろうなと
いささか残念な気がしました。
でも、その「カルメン」の告知を会の最初にしてくれたのです。
どこへでも出かけて行く大切さを教えてくれた1日でした。
藤井泰子さん、本当にありがとうございました。
(達人の館 代表 橘市郎)


karumenf

1118日から20日まで、春秋座で行われた
「立川志の輔落語会」は今年も満席でした。
思えば、全く紹介者無しで出演依頼の手紙を差し上げてから
年が経っているんですね。
駄目もとと思って出した手紙に快く、
出演OKの返事をいただいた時の感激は今でも忘れません。
それでも京都でやるということには師匠も慎重で、
リクエストした「中村仲蔵」ではなく、
通常の落語会を1回公演でのスタートでした。
2年後に「中村仲蔵」が実現したのをきっかけに
2回公演、3回公演と上演回数が増え、
今ではチケットが最も取りにくい人気公演となりました。

私は2年前から顧問プロデューサーという立場ですが、
当初の経緯があり、打ち上げにも声をかけていただいています。
8年間、志の輔師匠と打ち上げの席で対面出来たことは、
この上ない幸せでした。
お酒が入ると高座以上に面白い話が聞けるのです。
といっても師匠は全く乱れることなく、
高尚な笑いを提供してくれます。
私は元来下戸で過去7回は全くしらふで対話していました。
しかし、来年3月で春秋座との契約満了となりますので、
来年の公演の時は関係者としてではなく、
1観客として師匠の落語を聞くことになります。

そう思った途端、感傷も手伝い
「今晩は少しお酒を飲んでみようと決心しました」。
先月指揮者の星出さんと会った時も、
付き合い程度には飲んだのですが、
この日はビールをジョッキー(大)一杯、
紹興酒3杯(お猪口の大)をいただきました。
かつて作家の山口瞳さんが、
「酒を飲まない奴は人生の半分は損をしている」
という意味のことを書かれていましたが、
この日は素直に納得しました。
いつもより饒舌になり、楽しさが倍増したように思います。
真っ赤になっているのはわかりましたが気分は最高でした。
「これからは出来るだけ、付き合うぞ!」
などと思いつつ店を出ました。
この日は良く眠れたのも収穫でした。
志の輔師匠ありがとうございました。
8年目にしてやっと開眼したのも
師匠のムード作りのお陰です。

ところで、仲介者無しで手紙を送り、
快い返事をいただいた方が過去3人いらっしゃいます。
早稲田の大隈講堂でコンサートを引き受けてくれた
名テノールの故五十嵐喜芳先生。
ミュージカル「イダマンテ」の演出をしてくださった
3代目市川猿之助丈。
そして春秋座公演を実現してくれた立川志の輔師匠。
考えてみると皆さん人格者で、相手が無名でも、
ご自分で納得したらOKと言える方なんですね。
お陰さまでこの3人の方とは
長い長いお付合をさせていただきました。
本当にありがたいことです。

「山口瞳さん、損した半分の人生これから取り戻します」。
遅すぎますかねえ。

(達人の館 代表 橘市郎)

 


↑このページのトップヘ