一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

一昨日、オペラ「セヴィリアの理髪師」公演が無事終了しました。
始めての喜歌劇でしたが、お子さんを含め
若い年齢層のお客様が目立ちました。
就学前のお子さんが「面白かった」と
嬉しそうに言ってくれたのが印象的でした。
お客様、ソリスト、合唱団、オーケストラ全ての人たちが
笑顔で帰っていただけたのが何よりです。
この時代余りにも暗いニュースが続いていましたものね。
演奏を中心とした舞台成果も大変好評でした。
東京から見えたお一人のお客様だけが
「字幕操作にミスがあった。品がない。
オペラの演出をしてください。お客様に対して 失礼です」
などとアンケートに書いて頂きましたが、
オペラに対するこだわりを持ったお客様なのでしょう。
ご意見は尊重するとして、「生の声の魅力を伝えつつ、
オペラを広い層に、構えず見ていただきたい」
というコンセプトは大切にしていきたいと改めて思いました。

今回このオペラに携わってくれたスタッフ、
キャストの皆さんに心からお礼申し上げます。
そして、春秋座オペラに好感を持っていただきましたお客様は、
来年もぜひご来場くださいますようお願い申し上げます。
来年は開場15周年を記念して、「カルメン」を上演いたします。
こちらはまた最後にカルメンが刺殺されるという結末ですが、
メリメの原作をビゼーが実にドラマチックな音楽で綴った名作です。
素晴らしい歌手を集めたキャスティング、
花道を使っての効果的な演出が楽しみです。
どうぞご期待ください。
(春秋座顧問プロデューサー・達人の館 代表 橘市郎)

昨日、今日とオペラ「セヴィリアの理髪師」の
オーケストラ合わせが行われています。
昨日が初日のキャスト、本日が日目のキャストと分かれての稽古です。

今回のオーケストラ編成は、シンセサイザーを入れず、
生楽器による室内楽編成となっています。
指揮者の奥村哲也さんが、全体をバランス良く間引き
17人のメンバーにまとめてくれました。

850人というキャパの春秋座には
むしろちょうど良い編成だと思っています。
それに合わせ、合唱も男性名の精鋭部隊。
これでしたらソリストたちもかえって歌いやすいはずです。
オーケストラ合わせを聴いていて、
大味な相撲を取る大型力士に対し、
スピードと技で 勝負する日富士や嘉風を思い浮かべたのは、
少し飛躍しすぎでしょうか?
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11月20日の稽古風景

オーケストラや合唱のメンバーは若い人たちですが、
一人一人のクオリティーが実に高いのに驚きます。
既成のオーケストラは確かに、慣れという か、
プロフェッショナルな力では上かもしれません。
でも、楽器を演奏する技術では少しも遜色はありません。

熱心で有能な指揮者が、彼らから引き出してくれ さえすれば
素晴らしい音と表現が生まれてきます。
日本人若手の演奏家のレベルはこんなにも上がっているのですね。

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時間近くの稽古でも、いやな顔ひとつ見せず
ソリストと一体になって、音楽を作っていく姿勢には、
いとおしささえ感じました。

春秋座が目指しているオペラには、
こういうミュージシャンの存在が欠かせません。
舞台上とオーケストラボックスとが
一体となってかもし出してくれるアンサンブルが今から楽しみです。

 (春秋座顧問プロデューサー・達人の館 代表 橘市郎)

 


         歌劇「セヴィリアの理髪師」全2幕


今月の12日(土)、13日(日)に春秋座で
歌劇「セヴィリアの理髪師」が上演されます。
初日のロジーナ役はソプラノの川越塔子さん、
2日目のロジーナ役はメゾ・ソプラノの郷家暁子さんです。
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日間でソプラノ・バージョンと
メゾ・ソプラノ・バージョンが聴けるなんてことはあまりないので、
オペラ・ファンはぜひ聴き較べていただければと思います。

川越塔子さんは「夕鶴」「ラ・ボエーム」
「蝶々夫人」「椿姫」に続いて5回目の登場となります。
説得力ある演技と美声で、春秋座オペラには欠かせない方になりました。
川越さんについては、いろいろと書かせていただいているので
今日は郷家暁子さんについて書かせていただきます。

郷家さんは今年4月に行われたオーディションでロジーナ役を射止めました。
私はオブザーバーとして聴かせていただいたのですが、
際立って華やかで、歌も演技もしっかりしている人が登場したので、
相当キャリアのある方かなとお見受けしたのです。
しかし、関西ではほとんど知られていない方と聞いてびっくりしました。
私は「結果はお任せしますけど、あの郷家さんという人は素晴らしいですね」
と言って帰りました。
審査員の方たちも満場一致で彼女に決めたようです。

10日ほど経って、狂言師の茂山千三郎さんから、突然電話が入りました。
千三郎さんとは何度か仕事でご一緒していました。
「ご無沙汰しています。
この度は、家内がお世話になりますがどうぞよろしく」。
私は最初何のことか分かりませんでした。
「春秋座のオペラで、ロジーナをやらせていただきます
郷家暁子は私の家内でして」。
私は何も知りませんでした。
公演監督も「ご主人は同業者だそうです」と言っていたからです。
「そうだったんですか。そうと知っていたら、採用しなかったのに」
などと冗談を言いながら、ご縁を喜びました。

千三郎さんは先月、プロデューサーとして「三ノ会」を旗揚げしましたが、
当日は狂言師の女将さん役を立派に努めていた暁子さん。
オペラではご主人譲りのコミカルな役を披露してくれることでしょう。
世の中は狭いものですね。


(春秋座 顧問プロデューサー・達人の館 代表橘市郎)


郷家さんも参加された記者会見様子が
WEBでご覧になれます。

ぜひ、合わせて、お読みください。
歌劇「セヴィリアの理髪師」全2幕


1123日、南座で「OSK レビユー in kyoto」を見てきました。
私は大学卒業後17年間、日本劇場で働いていました。
1年の半分は「春の踊り」「夏の踊り」
「秋の踊り」というレビューでしたので
今でもレビューは大好きです。

OSKは今から14年位前に一度解散し、
その後有志が存続を訴えて、懸命に活動を続けてきました。
レビューの灯を消してはならないと制作者、出演者が
厳しい状況の中で頑張っている姿は痛々しいほどでした。

数年前、松竹が本格的に手を差し伸べた時、私は感激したものです。
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年も前に日劇ダンシングチーム(SKD)が解散した時、
私も制作者の一人として関わっていながら、
解散を阻止できなかったからです。
その点、松竹が手を差し伸べたことは、さすがというほかありません。

一度は興行的に難しいといわれたレビューを
復活させようとしたことは、英断だったに違いありません。
実際、南座と松竹座でOSK公演が再開された時には、
出演者も少なく、レビューの華やかさに欠ける舞台でした。
やはり、もうレビューは無理なのかなと思ったものです。
数年前、日劇で一緒だった真島茂樹さんが振付をした時も見ていますが、
精一杯やっているという感じでした。

今回も応援するくらいの気持ちで行ったのですが、
見てびっくり! 
幕開きの華やかさから大きく違っていました。
出演者も増え、舞台装置や衣装も豪華で、
南座がレビュー最盛期の活気に満ちていました。
新トップスター、「高世麻央 お披露目公演」と
うたっていることもあり、本気さが伝わってきたのです。
構成演出、振付も見事でした。

変化とテンポといったものが計算されていて、
またたく間に2時間半が過ぎました。
新トップスターの奮闘振りも目立ちましたが、
出演者全員のレベルの高さと笑顔が素晴らしかったです。
ヘッドマイクの普及のせいもありますが、
全員が力一杯歌っている姿も、隔世の感がありました。
昔は「歌うのが苦手だから、ダンサーになったんで、歌うのはどうも」
という出演者もいたのです。

とにかく、予想以上にハイ・レベルなレビュー公演でした。
これなら若い人も引き付けられるし、
昔からのレビュー・ ファンも満足すると思いました。
この公演は1124日迄ですが、
来春には松竹座で「春の踊り」を 開催するそうです。
昔、レビューの仕事に関わっていたものとして、
うれしくなるような舞台だったことを記しておきます。
橘市郎

1113日、春秋座で立川志の輔さんの落語会がありました。
7年連続で行われた今年は初の3回公演。
2日目の14日も3日目の15日も満員の盛況でした。
私は13日と15日 の公演を聴きましたが、
紫綬褒章受賞後のこともあり、光り輝くような熱演が印象的でした。
志の輔さんの落語には品格があり、知性があります。
頭をすっきりさせていないとつい逃してしまうギャグもあるので、
お客様もなお集中するのかも知れません。

一例を挙げますと
「落語界では弟子が師匠に似てくると、
”良くなってきたねえ、どことなく師匠に似てきたよ”
とよく褒められます。そこがデザイン界とは違うんですね」
などとすっという。
お客様はどっと笑うというより、くすくすといった笑いの後に、
拍手喝采して大笑いするんですね。
オリンピックのエンブレム問題を知らない人には分からないし、
そのニュースとの繋がり を瞬時にキャッチするには
集中していなければならないというわけです。

1席目の「ディアー・ファミリー」では、
どこの家庭でも起こりそうな話をユーモアたっぷりに、
家族崩壊寸前の葛藤を描いてくれます。
笑いながら涙が出てきてしまうお話です。凄いなあ!

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席目の「柳田格之進」は武士道、親子愛、師弟愛など
日本人の持つ美しい精神を明解にドラマチックに語る名作です。
これは、もはや単なる落語ではなく、
講談の要素も、一人芝居の要素を持ちながら、
それらを超えたエンターテインメントです。
扇子1本で鮮明な人間ドラマを聴かせ、
イメージさせる腕は、正に至芸です。

この志の輔さんの芸、
当初は、京都で受け入れられるのかという心配を
ご本人も持っていたようです。
関西には関西の笑いがありますから。
でも、7年間のうちにその心配は吹き飛んでしまいました。
大阪と京都の微妙な違いを突くように、
志の輔落語は完全に定着したようです。
来年の春秋座開場15週年記念公演では、
更なる熱演をしてくれると思います。
スケジュール調整など、いろいろ問題はあっても、
志の輔さんは春秋座を心から愛してくれていますから。

(春秋座顧問プロデューサー ・達人の館 代表 橘市郎)


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