一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

今月の12日(土)、13日(日)に春秋座で
歌劇「セヴィリアの理髪師」が上演されます。
初日のロジーナ役はソプラノの川越塔子さん、
2日目のロジーナ役はメゾ・ソプラノの郷家暁子さんです。
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日間でソプラノ・バージョンと
メゾ・ソプラノ・バージョンが聴けるなんてことはあまりないので、
オペラ・ファンはぜひ聴き較べていただければと思います。

川越塔子さんは「夕鶴」「ラ・ボエーム」
「蝶々夫人」「椿姫」に続いて5回目の登場となります。
説得力ある演技と美声で、春秋座オペラには欠かせない方になりました。
川越さんについては、いろいろと書かせていただいているので
今日は郷家暁子さんについて書かせていただきます。

郷家さんは今年4月に行われたオーディションでロジーナ役を射止めました。
私はオブザーバーとして聴かせていただいたのですが、
際立って華やかで、歌も演技もしっかりしている人が登場したので、
相当キャリアのある方かなとお見受けしたのです。
しかし、関西ではほとんど知られていない方と聞いてびっくりしました。
私は「結果はお任せしますけど、あの郷家さんという人は素晴らしいですね」
と言って帰りました。
審査員の方たちも満場一致で彼女に決めたようです。

10日ほど経って、狂言師の茂山千三郎さんから、突然電話が入りました。
千三郎さんとは何度か仕事でご一緒していました。
「ご無沙汰しています。
この度は、家内がお世話になりますがどうぞよろしく」。
私は最初何のことか分かりませんでした。
「春秋座のオペラで、ロジーナをやらせていただきます
郷家暁子は私の家内でして」。
私は何も知りませんでした。
公演監督も「ご主人は同業者だそうです」と言っていたからです。
「そうだったんですか。そうと知っていたら、採用しなかったのに」
などと冗談を言いながら、ご縁を喜びました。

千三郎さんは先月、プロデューサーとして「三ノ会」を旗揚げしましたが、
当日は狂言師の女将さん役を立派に努めていた暁子さん。
オペラではご主人譲りのコミカルな役を披露してくれることでしょう。
世の中は狭いものですね。


(春秋座 顧問プロデューサー・達人の館 代表橘市郎)


郷家さんも参加された記者会見様子が
WEBでご覧になれます。

ぜひ、合わせて、お読みください。
歌劇「セヴィリアの理髪師」全2幕


1123日、南座で「OSK レビユー in kyoto」を見てきました。
私は大学卒業後17年間、日本劇場で働いていました。
1年の半分は「春の踊り」「夏の踊り」
「秋の踊り」というレビューでしたので
今でもレビューは大好きです。

OSKは今から14年位前に一度解散し、
その後有志が存続を訴えて、懸命に活動を続けてきました。
レビューの灯を消してはならないと制作者、出演者が
厳しい状況の中で頑張っている姿は痛々しいほどでした。

数年前、松竹が本格的に手を差し伸べた時、私は感激したものです。
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年も前に日劇ダンシングチーム(SKD)が解散した時、
私も制作者の一人として関わっていながら、
解散を阻止できなかったからです。
その点、松竹が手を差し伸べたことは、さすがというほかありません。

一度は興行的に難しいといわれたレビューを
復活させようとしたことは、英断だったに違いありません。
実際、南座と松竹座でOSK公演が再開された時には、
出演者も少なく、レビューの華やかさに欠ける舞台でした。
やはり、もうレビューは無理なのかなと思ったものです。
数年前、日劇で一緒だった真島茂樹さんが振付をした時も見ていますが、
精一杯やっているという感じでした。

今回も応援するくらいの気持ちで行ったのですが、
見てびっくり! 
幕開きの華やかさから大きく違っていました。
出演者も増え、舞台装置や衣装も豪華で、
南座がレビュー最盛期の活気に満ちていました。
新トップスター、「高世麻央 お披露目公演」と
うたっていることもあり、本気さが伝わってきたのです。
構成演出、振付も見事でした。

変化とテンポといったものが計算されていて、
またたく間に2時間半が過ぎました。
新トップスターの奮闘振りも目立ちましたが、
出演者全員のレベルの高さと笑顔が素晴らしかったです。
ヘッドマイクの普及のせいもありますが、
全員が力一杯歌っている姿も、隔世の感がありました。
昔は「歌うのが苦手だから、ダンサーになったんで、歌うのはどうも」
という出演者もいたのです。

とにかく、予想以上にハイ・レベルなレビュー公演でした。
これなら若い人も引き付けられるし、
昔からのレビュー・ ファンも満足すると思いました。
この公演は1124日迄ですが、
来春には松竹座で「春の踊り」を 開催するそうです。
昔、レビューの仕事に関わっていたものとして、
うれしくなるような舞台だったことを記しておきます。
橘市郎

1113日、春秋座で立川志の輔さんの落語会がありました。
7年連続で行われた今年は初の3回公演。
2日目の14日も3日目の15日も満員の盛況でした。
私は13日と15日 の公演を聴きましたが、
紫綬褒章受賞後のこともあり、光り輝くような熱演が印象的でした。
志の輔さんの落語には品格があり、知性があります。
頭をすっきりさせていないとつい逃してしまうギャグもあるので、
お客様もなお集中するのかも知れません。

一例を挙げますと
「落語界では弟子が師匠に似てくると、
”良くなってきたねえ、どことなく師匠に似てきたよ”
とよく褒められます。そこがデザイン界とは違うんですね」
などとすっという。
お客様はどっと笑うというより、くすくすといった笑いの後に、
拍手喝采して大笑いするんですね。
オリンピックのエンブレム問題を知らない人には分からないし、
そのニュースとの繋がり を瞬時にキャッチするには
集中していなければならないというわけです。

1席目の「ディアー・ファミリー」では、
どこの家庭でも起こりそうな話をユーモアたっぷりに、
家族崩壊寸前の葛藤を描いてくれます。
笑いながら涙が出てきてしまうお話です。凄いなあ!

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席目の「柳田格之進」は武士道、親子愛、師弟愛など
日本人の持つ美しい精神を明解にドラマチックに語る名作です。
これは、もはや単なる落語ではなく、
講談の要素も、一人芝居の要素を持ちながら、
それらを超えたエンターテインメントです。
扇子1本で鮮明な人間ドラマを聴かせ、
イメージさせる腕は、正に至芸です。

この志の輔さんの芸、
当初は、京都で受け入れられるのかという心配を
ご本人も持っていたようです。
関西には関西の笑いがありますから。
でも、7年間のうちにその心配は吹き飛んでしまいました。
大阪と京都の微妙な違いを突くように、
志の輔落語は完全に定着したようです。
来年の春秋座開場15週年記念公演では、
更なる熱演をしてくれると思います。
スケジュール調整など、いろいろ問題はあっても、
志の輔さんは春秋座を心から愛してくれていますから。

(春秋座顧問プロデューサー ・達人の館 代表 橘市郎)


今週は、立川志の輔さんが紫綬褒章を、
北大路欣也さんが旭日小綬章を受賞されました。
お二人とも深い縁のある方なので、
わが事のように喜び、お祝いの言葉をお贈りしました。
これからますますいい仕事をされることと思います。
お二人に共通なところといえば、謙虚で誠実なお人柄。
そして信念を持ち地道に努力されていることです。
お二人のことは、また書く機会があるかと思いますが、
まず は平凡ですが「おめでとうございます!」と
申し上げておきます。

さて、達人の館が来年一番初めにお贈りする主催公演は、
テノール歌手村上敏明さんのリサイタルです。
26(金)18時半開演で、
会場は京都コンサートホール(小)です。
すでに1010日 から前売りを開始していますが、
まだ良いお席が取れます。
チラシを見ていただき早めのご予約をお勧めいたします。

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村上敏明さんは、日本で今一番活躍されているテノールのお一人です。
今年の大晦日、大阪フェスティバルホールで行われる
「久石譲シルベスタコンサート」では
ベートーベンの第9交響曲のソリストとして迎えられますし、
月には東京文化会館で上演される
歌劇「トスカ」の画家カヴァラドッシュ役を演じます。
クラシックの紅白といわれる
NHK
ニューイヤー・オペラコンサートにも連続4回出演中です。
歌舞伎役者のような顔立ちとハイCを完璧に出す
迫力のある声は多くのファンを虜にしています。

関西では初リサイタルになるため、
まだまだ生の声に触れたことのある方は少ないと思います。
ぜひ、この機会に村上さんの魅力に触れてみてください。
2月26日は、どなたもご記憶の26事件のあった日です。
日程はお忘れになることがないと思います。お待ちしています!
(達人の館 代表 橘市郎)

 


1017日、「江藤ゆう子 昭和を歌うー昭和60年代編」
が、無事終了しました。
昨年6月から4ヶ月おきに5回行われたシリーズなので、
マラソンを完走したような達成感がありました。

1年半がかりで昭和のヒット曲を130曲歌った
江藤さん、ご苦労様でした。
譜面を一切見ないようお願いしたのを、
きちんと守ってくれたばかりか、
ヴォーカル・トレーニングのため東京に数回出かけたり、
筋トレまでやって自分に磨きをかけ続けた努力に
敬意を表したいと思います。

もともとはジャズ・ピアニストである笹井順子さんは、
演歌も歌曲も弾かねばなりませんでした。
弾くばかりでなくアレンジまでやってくれました。

語り手の水野潤子さんはキャリアを生かし、
まるで自分の言葉でしゃべっているような語りをしてくれました。

スタッフも最小限の人数で、しっかりと支えてくれたものです。
回こっきりで終わってしまうコンサートと違い、
それぞれが次回に向かってより良い成果を挙げようと
一丸となる醍醐味は格別のものがありました。
そして、何よりも私たちを励ましてくださったのは、
述べ650人のお客様でした。
回ともお越しいただいたお客様も何人かいらっしゃいました。

はじめ一人で来られた方が
次には2人 3人と一緒に来られた方もいます。
カラオケ仲間の方が17人まとまって
来てくれたのもうれしいことでした。
何しろ平均年齢が高いので気を使いましたが、
帰りはエレベーターを使わず、
手すりのない急な階段を昇っていく
高齢なお客さまもいらっしゃいました。
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本来は5回で完結のつもりでしたが、
「昭和を歌うといいながら、
戦前の曲が1曲も入っていないじゃないか」
とのご指摘もあり、5月に番外編と称して、
アンコール公演を開催することになりました。
まだお申し込みをされていない方は
早めにお電話ください。


17日当日に前売りを始めたところ、
この日だけで80枚がでてしまいました。
ありがたいことです。

詳細は画像をクリックしてください。

改めて、5回シリーズへのご来場と番外編へのご協力に感謝申し上げます。
(達人の館  代表 橘市郎)

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