4月2日、大阪新歌舞伎座に行き、
細雪」の舞台稽古を見てきました。
初演以 来32年間、演出を担当している
水谷幹夫さんが声をかけてくれたのです。
彼は東宝演出部の同期生ですが、
それ以上にポン友として長いお付き合いをさせてもらっています。
麻雀に競馬といった共通の趣味が、
お互いの信頼感を高めたのですから不思議ですね。

私も彼も東京の下町生まれで、
江戸っ子気質のところが合うのかもしれません。
彼には気風の良さがあり、
賭け事をしてもフェアプレイといった感じで実にすがすがしいのです。
曲がったことが大嫌いで、人に優しいのですから
男性からも、女性からも好かれるのは当たり前です。

「細雪」は上演回数が1500回を越えたそうですが、
一貫して水谷さんが演出をしてきた事実は、
彼の人柄がこの作品を支えてきたことを
証明しているのではないでしょうか。
緞帳が上がった瞬間、「これが商業劇場のお手本だ」と
言わんばかりのセットが現れました。
大阪船場の屋敷の豪華さに圧倒されます。
上手に吊られた桜の枝が春の匂いを伝えるなかで、芝居が始まり、
四人姉妹の性格の違いが、短時間のうちに描かれます。
場面変わって芦屋の洋館。今度は桜の吊り枝が下手上にあり、
同じ春でありながら、雰囲気ががらりと変わります。
このように計算されつくされた舞台装置の中で、
ドラマが進行していく見事さはさすがと言うほかありません。
いろいろあって、最後に四人姉妹が
4台のピンスポットの中で語り合う場面は、
満開の桜の下、まさに幻想的でした。

台本が練りに練り上げられたものになっているので、無駄がない。
その上、人物の配置が実に美しく、どこを取っても絵になっている。
友人の演出した舞台という身びいきでなく、
本当に良く出来た芝居だと思いました。
四人の女優さんもそれぞれの性格を良く演じていて好演でしたし、
豪華な衣装を美しく着こなしていました。

私が最近企画している作品が商店街の小さな店とすれば、
この「細雪」は一流のデパートのような作品でした。
世の中にはいろいろなものが存在しているから楽しいのです。
どちらが良くてどちらが悪いというものではありません。
私は素直に水谷さんが名演出家になったことを喜びました。
この日、やはり長い間プロデューサーを努めて来られた
酒井喜一郎さんともお会いできました。

酒井さんは私の高校の先輩でもある方です。
そして、素晴らしい舞台装置をデザインした石井みつるさんは、
何と春秋座のオペラ「椿姫」の美術を担当してくれた方です。
方やお金をかけず、知恵を使って考えてくれたセット。
方や思う存分お客様のために、お金をかけたセット。
石井さんは言ってくれました。
「ああして苦労した仕事も楽しかったです。またやらせてください」
この石井さん、実は、「椿姫」を見てすっかり、
川越塔子さんのファンになってしまったそうです。
「声や美貌はもちろんのこと、
役を内面から、表現しているのが素晴らしい。
ヒロインの情 念が乗り移っているようでした」。

「細雪」の舞台装置をデザインした石井みつるさんが絶賛する
川越塔子さんのリサイタルは、
5月16日(土)
1ヶ月後に迫りました。どうぞお見逃しなく。