先日、渡辺プロダクションの創設者、
渡辺晋さんの業績を讃えるテレビ番組がありました。
日劇のプロデューサーをしていた時、
共同で3本のミュージカルを制作したこともあり、
特別な思いで見させていただきました。

私が早稲田の後輩であることもあったのでしょうか、
何かと目にかけていただいたことが思い出されます。
天地真理さんを主役にしたミュージカルを作ろうとした時、
私はトーマ作曲のオペラ「ミニヨン」を下敷きにして
「君よ知るや南の国」という作品を作ることを提案しました。

錚々たる先輩方の企画が出ていたのにもかかわらず、
渡辺晋さんは私の企画を取り上げてくれたのです。
にもかかわらず、私は生意気にも、
自分が立てた企画ということで独走しました。
キャストもスタッフもほとんど独断で決めていき、
東大病院に入院中の渡辺社長に報告のみしておりました。
自分は東宝のプロデューサーであり、
渡辺プロの社員ではないというプライドもあったのでしょう。
社長は次の作品「私はオディーヌ」(小柳ルミ子主演)でも
私のやり方を黙って見てくれていました。
ところが最後の打ち上げの日時や場所を伝えた時、
「何故私に相談しないで、決めてしまったのか?」と諌められました。
今までマイペースでやってきた私は
その時素直に謝れなかったのを覚えています。
しかし、今は、もっといろいろと相談していたら、
結果が違っていただろうなと大人の反省をすることが出来ます。
渡辺晋という大プロデューサーに対し、
もっと謙虚であるべきでした。
これを若気の至りというのでしょうね。

それにしても「君よ知るや南の国」は大作だったと思っています。
脚本・田波靖男/演出・中村哮夫/作曲・宮川泰/
作詞・片桐和子/振付・県 洋二というスタッフは
いい仕事をしてくれました。
また、キャストの天地真理はやはり魅力的です。
当時歌謡曲歌手としての力量を低く見ている人もいましたが、
どうしてどうして今聴いてもその歌唱力は素晴らしいものがあります。
峰岸徹、小山田宗徳、友竹正則、加茂さくらといった共演者もレベルが高い。
今一度 見直されていい作品だと思いますね。
「君よ知るや南の国」で検索すると、
熱心な真理ちゃんファンがアップしてくれたメドレーが聴けるのも驚きです。
(橘市 郎)