929日にACT赤坂で行われた立川志の輔さんの落語
「忠臣蔵」と「中村仲蔵」を聴いて来ました。
「中村仲蔵」はかつて国立劇場で聴き、
ぜひ、春秋座でやって欲しいと師匠にラブレターを書いた作品です。
師匠が願いを聞いてくれて、春秋座での公演が実現したこともあり
どうしても3度目を聴きたかったのです。

ACT赤坂は1,300のキャパシティーがあり、
ミュージカルに最適な劇場だけに
師匠がどのような演出を考えているのかも興味津々でした。
1部の忠臣蔵は北斎の浮世絵を見せつつ、
全編のあらすじを面白おかしく紹介。
通して忠臣蔵を読んだり、
見たりしていない自分に恥ずかしさを感じつつ
「成程!」 などと感心してしまいました。
下手で講談風に語る師匠の説明は解りやすく
「ためしてガッテン」を思わせるような風情がありました。

休憩後、いよいよあの思い出の「中村仲蔵」です。
まず、血筋のない大部屋の役者が
如何に上に上がっていけないかを解説。
次に団十郎が仲蔵の資質を見抜き、
引き上げて行く課程を語ります。
仲蔵はついに名代になるのですが、
周囲の嫉妬から与えられた一役は、
忠臣蔵五段目に登場する定九郎役でした。
この役が如何につまらない役として演じられていたか、
五段目がそれまで弁当幕と言って観客に軽んじられていたかが語られます。

この時師匠が一部で忠臣蔵全体を紹介した意味が分かりました。
何と言う演出でしょう。
志の輔師匠の狙いが見事功を奏しました。
たかが落語、されど大河ドラマ、
と言えるくらい忠臣蔵という長編ドラマの中の五段目が理解できたのです。

仲蔵という役者が如何にして、名代にまで上がって行き、
与えられた役を研究し、工夫していったかを見事に語ってくれました。
仲蔵という役者と立川志の輔という落語家が
ダブって見えたのは私だけでしょうか。

団十郎、定九郎のモデルになった浪人など
登場してくるキャラクターを見事演じ分けた
技量の素晴らしさもあり、芝居を見ているような迫力がありました。

春秋座とのご縁を感じつつ聴いていたせいもあり、
私は笑うより感動して涙が止まりませんでした。
ACT
赤坂という劇場の性格を考慮し、
忠臣蔵に絞って2部構成にした師匠の着想には脱帽です。

師匠は今年も春秋座に来てくれます。
初日の金曜日はまだゆとりがあるようです。

どうぞお見逃しなく。

春秋座公演はこちら
20151113


達人の館  代表 橘市郎)