1113日、春秋座で立川志の輔さんの落語会がありました。
7年連続で行われた今年は初の3回公演。
2日目の14日も3日目の15日も満員の盛況でした。
私は13日と15日 の公演を聴きましたが、
紫綬褒章受賞後のこともあり、光り輝くような熱演が印象的でした。
志の輔さんの落語には品格があり、知性があります。
頭をすっきりさせていないとつい逃してしまうギャグもあるので、
お客様もなお集中するのかも知れません。

一例を挙げますと
「落語界では弟子が師匠に似てくると、
”良くなってきたねえ、どことなく師匠に似てきたよ”
とよく褒められます。そこがデザイン界とは違うんですね」
などとすっという。
お客様はどっと笑うというより、くすくすといった笑いの後に、
拍手喝采して大笑いするんですね。
オリンピックのエンブレム問題を知らない人には分からないし、
そのニュースとの繋がり を瞬時にキャッチするには
集中していなければならないというわけです。

1席目の「ディアー・ファミリー」では、
どこの家庭でも起こりそうな話をユーモアたっぷりに、
家族崩壊寸前の葛藤を描いてくれます。
笑いながら涙が出てきてしまうお話です。凄いなあ!

2
席目の「柳田格之進」は武士道、親子愛、師弟愛など
日本人の持つ美しい精神を明解にドラマチックに語る名作です。
これは、もはや単なる落語ではなく、
講談の要素も、一人芝居の要素を持ちながら、
それらを超えたエンターテインメントです。
扇子1本で鮮明な人間ドラマを聴かせ、
イメージさせる腕は、正に至芸です。

この志の輔さんの芸、
当初は、京都で受け入れられるのかという心配を
ご本人も持っていたようです。
関西には関西の笑いがありますから。
でも、7年間のうちにその心配は吹き飛んでしまいました。
大阪と京都の微妙な違いを突くように、
志の輔落語は完全に定着したようです。
来年の春秋座開場15週年記念公演では、
更なる熱演をしてくれると思います。
スケジュール調整など、いろいろ問題はあっても、
志の輔さんは春秋座を心から愛してくれていますから。

(春秋座顧問プロデューサー ・達人の館 代表 橘市郎)