村上敏明さんのリサイタルまで、あと10日あまりになりました。
主催者として以上に1ファンとしてワクワクしています。
というのも、私はいいテノールの歌声が大好きだからです。
オペラ歌手はソプラノもバリトンも好きには違いありませんが
中でもテノーに弱いんですね。
甘い声も、ドラマチックな張りのある声も、その緊迫感がたまりません。
同じ人間の声なのに、鍛えると人間業とは思えない迫力を伝える。
まるで時速160キロを越すスピードボールを投げるピッチャーや
100メートルを9秒台で走る短距離ランナーを見るように興奮するのです。

私は中学1年生の時、音楽部の先輩に半ば強制的に、
フェルッチョ・タリアビーニという
イタリア人テノールのリサイタルに連れて行かれました。
「音楽が好きなら、この人の声を聴かなくてはいけない。
これを聴いて何にも感じないようだったら音楽部にいる資格はない」。
この人は自分でミュージカルを作曲するほど、ませていたので、
反論することは出来ず、むしろいやいや会場に出かけました。

神田にある共立講堂の3階席に座ると、
ステージははるか遠くに見えます。
金屏風とピアノだけのシンプルな舞台に
やがて小太りで小柄なおじさんが出てきました。
拍手が起こった時、金屏風の後ろを小さな物体が通り過ぎました。
一瞬客席がどよめきました。
何とそれはネズミだったのです。
でも、タリアビーニは何もなかったように歌い始めました。
マイヤベーヤの『アフリカの女』より
「おお!パラダイス」というアリアでした。
信じられないような細く優しい声。
でも、ピアニッシモの声が
きちんと3階までちゃんと聴こえるんです。
マイクを使わないのにどうして?
と思っているうちに曲調が変わり、
今度は張りのある声が響いてきました。
そして高音がフォルテで発せられた時です。
私の耳の中が共鳴して「ビビッツ」と響いたのです。
私はびっくりして耳の中に指を入れたほどです。
「何だこれは!」「人間の声ってこんなに凄いんだ!」。

だからと言ってタリアビーの声は
決してうるさいというものではありませんでした。
甘さと辛さが心地よく調合された
おいしい料理のように気持ちのいいものでした。
私はそれ以来タリアビーニ信者になりました。
そしていろいろなテノールのレコードを買い、聴き比べをしました。
エンリコ・ カルーソ
ベニアミーノ・ジーリ
マリオ・デル・モナコ
ジュゼッペ・ステファノ
ユッシ・ビヨルリンク など
いろいろと個性があり、聴き応えがありました。
これが元ですっかりオペラファンになり、
イタリア歌劇団の来日公演に
家庭教師のバイト代を全てつぎ込むことになるのです。

でも今の仕事に繋がってくるのですから
感謝しなければなりませんね。
長くなりましたので今日はこの辺で。
私が如何に226日を楽しみにしているか
お分かりいただけましたでしょうか?
 
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226(金)京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
「テノール 村上敏明リサイタル」


S席 4500円 B席3500円

チケットお申し込みは 電話 0757088930   
           FAX  0757088934