27日、歌舞伎俳優の市川右近さんが、
来年1月に3代目市川右團次を襲名するという
記者会見が行われました。
私はすぐにお祝いのメールを送りました。
すると「無事会見を終えほっとしております。
猿翁師匠のご理解あってのことと感謝しております。
応援のほどよろしくお願いいたします」
というメールが返って来ました。

右近さんは猿翁さんの初部屋子として入門。
スーパー歌舞伎を立ち上げた猿翁さんを
一番弟子として長い間支えてきました。
私が猿翁さんに演出をお願いした
ミュージカル「イダマンテ」でも演出補として、
近藤真彦さんの演技指導を献身的にしてくれました。
家柄にこだわらずお弟子さんを育ててきた猿翁さんが倒れた時、
代目猿之助を継承するのは
右近さんであろうと大方の人は思いました。
しかし、猿翁さんが熟慮に熟慮を重ねて出した結論は、
「甥っ子の亀治郎さんが代目猿之助を襲名」でした。

大樹の傘に頼らず、自らおもだか屋を離れて活動し出した亀治郎さんに、
かつて歌舞伎界の異端児といわれた自分を重ね合わせたのかもしれません。
右近さんは忠実に師匠の芸を見習うタイプでした。
師匠の代役を務めた時も立派にその役割を果たしていました。
一方、亀治郎さんには型破りというか奔放さがありました。
猿翁さんは家柄にこだわる人ではないので、
亀治郎さんの野性味を買ったのだと私は思っています。

とはいうものの、右近さんにしてみれば
複雑な気持ちだったに違いありません。
でも彼は決して腐ったり、不満を口にすることはありませんでした。
むしろ、その後に与えられた役を精一杯、彼らしく演じていました。
お父様が飛鳥流の宗家ということもあり、男らしい舞は独特のもの。
師匠譲りの演出家としての才能も発揮。
オペラ「夕鶴」の演出は素晴らしいものでした。

私は、右近さんは右近さんで
新しい個性を発揮して欲しいと密かに思っておりました。
そんな意味でも、80年ぶりに復活する
名跡の襲名は祝福しないではいられません。
また、息子さんのタケル君の2代目右近襲名もいいですねえ。
いずれは実現するであろう
猿翁さんのお孫さん団子君との共演は夢のようです。
右近さんがこの襲名を「猿翁師匠のご理解あってのこと」と
感謝している背景が私にははっきり見えます。
これこそ師弟愛なのでしょう。

                   (達人の館 代表 橘市郎)