1118日から20日まで、春秋座で行われた
「立川志の輔落語会」は今年も満席でした。
思えば、全く紹介者無しで出演依頼の手紙を差し上げてから
年が経っているんですね。
駄目もとと思って出した手紙に快く、
出演OKの返事をいただいた時の感激は今でも忘れません。
それでも京都でやるということには師匠も慎重で、
リクエストした「中村仲蔵」ではなく、
通常の落語会を1回公演でのスタートでした。
2年後に「中村仲蔵」が実現したのをきっかけに
2回公演、3回公演と上演回数が増え、
今ではチケットが最も取りにくい人気公演となりました。

私は2年前から顧問プロデューサーという立場ですが、
当初の経緯があり、打ち上げにも声をかけていただいています。
8年間、志の輔師匠と打ち上げの席で対面出来たことは、
この上ない幸せでした。
お酒が入ると高座以上に面白い話が聞けるのです。
といっても師匠は全く乱れることなく、
高尚な笑いを提供してくれます。
私は元来下戸で過去7回は全くしらふで対話していました。
しかし、来年3月で春秋座との契約満了となりますので、
来年の公演の時は関係者としてではなく、
1観客として師匠の落語を聞くことになります。

そう思った途端、感傷も手伝い
「今晩は少しお酒を飲んでみようと決心しました」。
先月指揮者の星出さんと会った時も、
付き合い程度には飲んだのですが、
この日はビールをジョッキー(大)一杯、
紹興酒3杯(お猪口の大)をいただきました。
かつて作家の山口瞳さんが、
「酒を飲まない奴は人生の半分は損をしている」
という意味のことを書かれていましたが、
この日は素直に納得しました。
いつもより饒舌になり、楽しさが倍増したように思います。
真っ赤になっているのはわかりましたが気分は最高でした。
「これからは出来るだけ、付き合うぞ!」
などと思いつつ店を出ました。
この日は良く眠れたのも収穫でした。
志の輔師匠ありがとうございました。
8年目にしてやっと開眼したのも
師匠のムード作りのお陰です。

ところで、仲介者無しで手紙を送り、
快い返事をいただいた方が過去3人いらっしゃいます。
早稲田の大隈講堂でコンサートを引き受けてくれた
名テノールの故五十嵐喜芳先生。
ミュージカル「イダマンテ」の演出をしてくださった
3代目市川猿之助丈。
そして春秋座公演を実現してくれた立川志の輔師匠。
考えてみると皆さん人格者で、相手が無名でも、
ご自分で納得したらOKと言える方なんですね。
お陰さまでこの3人の方とは
長い長いお付合をさせていただきました。
本当にありがたいことです。

「山口瞳さん、損した半分の人生これから取り戻します」。
遅すぎますかねえ。

(達人の館 代表 橘市郎)