我が家にある往年の名歌手の演奏を聴き直していることは
以前、紹介しましたが、
何度聴きなおしても飽きないのがタリアヴィーニです。
私がこれまでで一番、感銘を受けた歌手をあげるとすれば、
間違いなくこの人です。
初めて人の声の考えられない美しさと
迫力を教えてくれた恩人でもあります。

この19日に「黒田恭一さんを偲ぶ会」が行われましたが、
黒田さんもタリアヴィーニのファンであり、
高い評価をしていることは10年も後に知ったのです。
もしかするとこの感性の共通が私を認めていただいたのかも知れません。
あの柔らかいソット・ヴォーチェと
響き豊かな迫力あるフォルテシモの使い分けは
ほかの歌手には絶対出来ません。

温かい人柄といい、愛すべき小柄な体型といい
「私はスターだ」という威圧感のないのも魅力でした。
今思えば黒田さんは、どこか雰囲気がタリアヴィーニに
そっくりだったように思います。

仕事とスケジュールが重なり
「黒田恭一さんを偲ぶ会」には参加できなかった私ですが、
天国でタリアヴィーニと再会している黒田さんを想像して
うらやましく思ったりしています。
今宵もタリアヴィーニの声を聴いて黒田さんを偲びます。

(音楽・演劇プロデューサー  橘市郎)