服部克久さんが亡くなったというニュースはちょうどお父様の作品集のCDを聴き終わった数日後入ってきました。寂しいです。

克久さんは、明治座で松平健さん主演の「唄の絵草紙」を私が演出した時、音楽監督を担当してくれました。オペラ好きな私は、事もあろうに「歌麿をめぐる5人の女」の景ではプッチーニのアリアを使って場面を構成する台本を書きました。これはある意味、克久さんだからこそうまく行くと思ったのです。

案の定、克久さんは松平健さんの個性を生かしながら見事優雅なアレンジをしてくれました。「タイースの瞑想曲」を使った舞踊シーンや天草四郎に扮した松平健さんが歌う「SAME WERE」の編曲も流石でした。多分面倒な仕事をお願いしたとは思いますが、決して温厚な表情を崩す事無く、楽しそうに録音に立ち会う克久さんが頼もしく思えたものです。

克久さん、どうぞゆっくりお休み下さい。
あなたの功績と温厚な笑顔は息子さん、娘さんに間違いなく引き継がれていますから。

(音楽・演劇プロデューサー   橘市郎)