一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

2015年05月

今日も国会で審議されている集団的自衛権行使について
私なりに意見を述べさせていただきたいと思います。
「今このように世界情勢が緊迫している以上、国民の安全と命を守るために…」
と首相はおっしゃいますが
自衛隊が紛争中に機雷を撤去しに行ったり、
後方支援という名目で武器、弾薬を送り込むことが、
本当に平和に繋がるのでしょうか?

現状がこうだから、ことと次第では日本もいっしょになって
戦争のできる国になるというのが積極的平和主義なのでしょうか?
「こうしたいと宣言した後に、国民の圧倒的支持を受けたので、
法案成立を進めている。それが民主主義というものでしょう」
という論理も気になります。
第2次世界大戦の直前、日本は国を挙げて戦争に向かっていました。
ごく少数の人がマークされながら異論を唱えましたが、
結果はご覧のとおりです。
戦争は一度始まってしまったら、ルールも道理もありません。

不信と憎しみが渦となって、人々を狂気に導きます。
核が拡散している現代において第3次世界大戦が始まったら
勝ちも負けもない、人類は破滅します。
本当に平和を希求するなら、
如何に戦争が起こらないようにするかを考えなくてはいけません。
アメリカもロシアも中国も世界中が悩んでいます。

抑止力を高めるためにお互いに軍事力拡張をしなければならない現実。
さらに軍事同盟を形成すると同時に仮想敵国を作る。
これは第2次世界大戦前夜に見られた現象です。
あの時は日本で開催されることになっていたオリンピックも中止になりました。
お互いを牽制しながらどんどんきな臭くなっていくのが危険なのです。
悲惨な体験をしたから、もう2度と戦争はしたくない。
そのためには憲法第9条が必要だったのです。

これはアメリカに作らされたという人もいます。
だったら余計アメリカには第9条が印籠となります。
「あなたたちと一緒に作った憲法があるために、
私たちは専守防衛以外に軍事力は使えません」と
主張できるではありませんか。

日本は、自分からは決して攻撃しないという信用を得ること、
日本は常に中立で心のそこから平和を願っていると
尊敬されることが最大の防御なのです。
自衛隊のかたが1人でも殺されたら、
自衛隊のかたが1人でも人を殺すようなことがあったら、
事態は予測できません。

とにかく戦争に巻き込まれないこと。
憲法9条という伝家の宝刀を使って、
人間同士が殺しあうことの愚を世界にアピールすること。
私はそれを願っています。
人間同士が仲良くするために決して欠かせないのは、
相手の立場になって物事が考えられること、
相手が嫌がることを敢えてしないということです。
お互いに信頼しあうことが積極的平和主義だと私は思います。
それを堂々と実現してくれる政治家の登場を願わずにはいられません。
達人の館 代表 橘市郎

516日、 川越塔子リサイタルが無事終了しました。
客席はやや寂しかったのですが、
川越さんの歌声を聴いた人は一様に
「感動しました!」と感想を述べて行かれました。

辛口の京都造形芸術大学の尾池学長も
わざわざ「良かったよ」と声をかけて下さいましたし、
一流の演奏家を聴きなれているホールのF係長も
「凄い!」と 褒めてくれました。
この日は多彩なVIPのお客様も見えていましたが、
どなたもびっくりした様子でした。

やはり川越さんは達人です。
一年おいて再来年には2回目のリサイタルを実現したいと思っています。
「今度は全編フランス物で行って見ましょうか?」と
川越さんもやる気十分でした。
アンサンブルホールムラタの響きも気に入ってくれたようです。
動員に関してはぜひリベンジしたいものです。
川越さん、素晴らしい歌唱をありがとうございました。
そして良かったと思っていただいたお客様、
次回はお友達をたくさん連れてきていただきますようお願いいたします。
たくさんの大きな拍手ありがとうございました。

さて、達人の館が今度開催するのは、
6
27日にNAM HALLで行う
「江藤ゆう子 昭和を歌うー昭和50年編―」です。
昭和20年代編から始まったシリーズも4回目になりました。
早いもので1017日の5回目で完了します。
毎回満席になるこのコンサート、残席わずかです。
お早めにお申し込みください。

なお、今まで履物をスリッパに履き替えていただいていましたが、
627日のこの会から、そのままお入りいただけることになりました。
これはホールのオーナーが、お客様の立場に立って考えてくれた結果です。
これで、入退場がスムーズになり、
履物を間違えるというアクシデントもなくなります。
17時からの回も、終了時は明るいこの時期、
どうぞ安心してお出かけください。
(達人の館 代表 橘市郎)

川越さんとのご縁は、2009年に始まりました。
京都の春秋座で、オペラ「夕鶴」を上演したいと思い、
日本オペラ振興会に相談したところ、
ヒロインのつうに川越さんの名前が入っていました。

東京を離れていたこともあり、この時私は
川越さんのお名前を存じ上げていませんでした。
一度歌声を聴いてみたいと思っていたところ
ちょうど東京の王子ホールで、初のリサイタルがあるとのこと。
これはいい機会と上京した私は
期待半分、不安半分で第一声を聴きました。

曲目は「セヴィリアの理髪師」の
「今の歌声」だったのですが、衝撃的でした。
まず天性の美声に引付けられ、
響きを大切にした声のコントロールにうっとりしました。
一般審査委員から支持を受け、
コンテストで優勝したということを聞いていたので、
声量は抜群で華やかだが、多少荒っぽい歌い方をする人ではないかと
勝手に想像していた私は完全に打ちのめされました。

完璧な音程と細やかな表現、20歳を過ぎてから
本格的なレッスンを受けた人とは思えない完成度でした。
「初めてのリサイタルということで、背中は汗でびっしょりです」と
自然体で素直にしゃべるトークも好感が持てました。

プログラムが進むにつれて、
川越さんが如何に歌の内容を理解して歌っているかが伝わってきました。
自慢の声をこれ見よがしに聴かせるのではなく、
オペラのアリアであれば、
主人公がどのような女性かを思い描き歌っているのです。
「そんなこと当たり前じゃないか」と言われるかもしれませんが、
オペラ歌手には往々にして、
如何に素晴らしい声を聴かせるかに夢中な人もいるのです。
その点では、演歌歌手に見習うべきかも知れません。
川越さんの歌 には日本人特有の繊細さが見られました。

その上、オペラ歌手に必要なスケールと華やかさは
ちゃんと持ち合わせていたのです。
プロデューサーという仕事をしていて、一番楽しいのは
「こんな素晴らしい人に出会ったよ」とその人の資質を人に伝え、
さらに飛躍してもらう機会を提供することです。
川越さんは予想したとおり、「夕鶴」のつうを手始めに、
「ラ・ボエーム」のミミ、「蝶々夫人」の蝶々さん、
「椿姫」のヴィオレッタと順調にレパートリーを広げてきました。
一方では「天守物語」「高野聖」「袈裟と盛遠」といった
日本もののオペラでも成果を挙げています。

彼女が演じたヒロインたちは
それぞれ川越さんがイメージして作り上げたもので、
どの女性も鮮明な存在感を残しています。
今回の、オペラ・アリアだけで構成されたプログラムの中で、
それぞれのヒロインがどんな生き方をしたか
川越さんは明確に表現してくれるはずです。
わずか分のアリアから女性像を作り上げる川越さんの力量は
並大抵なものではありません。

当日は13時より、小ホール入り口で当日売りをいたします。
前売りチケットをお持ちでない方もぜひお出かけください。
お待ちしています。
(春秋座 顧問プロデューサー・達人の館 代表橘市郎)


先日、渡辺プロダクションの創設者、
渡辺晋さんの業績を讃えるテレビ番組がありました。
日劇のプロデューサーをしていた時、
共同で3本のミュージカルを制作したこともあり、
特別な思いで見させていただきました。

私が早稲田の後輩であることもあったのでしょうか、
何かと目にかけていただいたことが思い出されます。
天地真理さんを主役にしたミュージカルを作ろうとした時、
私はトーマ作曲のオペラ「ミニヨン」を下敷きにして
「君よ知るや南の国」という作品を作ることを提案しました。

錚々たる先輩方の企画が出ていたのにもかかわらず、
渡辺晋さんは私の企画を取り上げてくれたのです。
にもかかわらず、私は生意気にも、
自分が立てた企画ということで独走しました。
キャストもスタッフもほとんど独断で決めていき、
東大病院に入院中の渡辺社長に報告のみしておりました。
自分は東宝のプロデューサーであり、
渡辺プロの社員ではないというプライドもあったのでしょう。
社長は次の作品「私はオディーヌ」(小柳ルミ子主演)でも
私のやり方を黙って見てくれていました。
ところが最後の打ち上げの日時や場所を伝えた時、
「何故私に相談しないで、決めてしまったのか?」と諌められました。
今までマイペースでやってきた私は
その時素直に謝れなかったのを覚えています。
しかし、今は、もっといろいろと相談していたら、
結果が違っていただろうなと大人の反省をすることが出来ます。
渡辺晋という大プロデューサーに対し、
もっと謙虚であるべきでした。
これを若気の至りというのでしょうね。

それにしても「君よ知るや南の国」は大作だったと思っています。
脚本・田波靖男/演出・中村哮夫/作曲・宮川泰/
作詞・片桐和子/振付・県 洋二というスタッフは
いい仕事をしてくれました。
また、キャストの天地真理はやはり魅力的です。
当時歌謡曲歌手としての力量を低く見ている人もいましたが、
どうしてどうして今聴いてもその歌唱力は素晴らしいものがあります。
峰岸徹、小山田宗徳、友竹正則、加茂さくらといった共演者もレベルが高い。
今一度 見直されていい作品だと思いますね。
「君よ知るや南の国」で検索すると、
熱心な真理ちゃんファンがアップしてくれたメドレーが聴けるのも驚きです。
(橘市 郎)


↑このページのトップヘ