達人の館

   本物の芸をじっくりと味う、大人のためのコンサートを企画・主催しています。

2016年04月

版画家の井堂雅夫さんが23日に逝去されました。
昨年、京都文化博物館で展覧会を開催された時、坊主頭にされていたので
「いよいよ悟りの世界に入られたのですね」などと冗談を言ったのですが、
それが病気のせいなどとは少しも思いませでした。

井堂さんは25年ほど前から仏教をテーマにした絵も描いていたので、
深い瞑想にふける姿を連想して、そう言ったのです。
奥様のきよのさんも何もおっしゃらなかったのですが、
今考えると随分無神経な男だと思われたことでしょう。
作曲家の尾上和彦さんから訃報を聞いた時、
「えっ!」と私は絶句していました。
あの時何ということを言ってしまったのだろうと後悔するとともに、
信じられない、信じられないと繰り返していました。

井堂さんには本当にお世話になりました。
30年も前に井堂さんが東京で江戸小袖のファッションショーを開いた際、
演出を依頼されたのがお付き合いの始まりでした。
資生堂のキュージンヌというレストランで、
外国人のモデルさんだけを使ってのものでしたが、
色使いが斬新で、少しも違和感がなかったのが印象的でした。
弾として狸穴のラフォーレでやった時には
フラメンコなどの踊りも取り入れ注目されました。

それ以来、いろいろと声をかけていただき
京都での若柳吟さんの舞踊会や、
妙心寺で行われたハープを使っての
朗読会の演出も井堂さんのご紹介でした。
岩手県盛岡のデパートで行われた
「光と音と香りによる井堂雅夫の世界」の
演出も忘れられることが出来ません。
そして、代目猿之助さんから、
京都造形芸術大学内に出来る「春秋座」
に来てくれないかとお誘いを受けた時、
真っ先に相談したのが井堂さんでした。
「新しい大学で、とにかく元気があるので面白いと思いますよ」
と言ってくれたのが決心の決定打でした。

車で案内して京都の魅力を教えてくれたのも、
KBS京都「極上の京都」の出演を薦めてくれたのも井堂さんでした。
かのんぷ♪ というデュオのコンサートでは
「京都百景」のスライドや江戸小袖を快く貸してくださいました。
花巻のアトリエにも何度か伺いました。
奥様のきよのさんも私の企画した公演にいつも来てくださっています。
私が年間東京に戻ることになった時も
ご夫婦で送別会をやってくださいました。
東京にいた時から長くお付き合いをさせていただいた
恩人であり親友を失い、私はショックを隠せません。

井堂さんは私より歳も若いのです。
23
年前会社をクローズし意気消沈していた私を励まし、
懐かしのGSメドレーを歌ってくれた井堂雅夫さんはもういないと思うと、
人の命のはかなさが切々とこみ上げてきます。
今日もサイン入りの「京都百景」を見直し、
スケッチブックを手に持った井堂さんを思い浮かべています。
どうか、ご自分の描いた極楽の世界で安らかにお眠りください。 
合掌。
(橘市郎)

昨年66日 に書いた
イタリア在住のソプラノ藤井泰子さんに会いました
読んでいただいた方は覚えていてくださると思いますが、
私は、初対面ですっかり彼女の人柄と
オペラ歌手としての実力に惚れ込みました。
そして、長年プロデューサーをやって来た男の勘で、
リサイタルの開催を申し入れました。

川越塔子さん 村上敏明さんのリサイタルに続く
第3弾を実現する積もりでした。
ところが、春秋座開場15周年に行うオペラの演目を検討している時、
ビゼーの「カルメン」が浮上してきました。
私は藤井さんがオペラに興味を持ち始めたのは8歳の時、
お母さんが車の中でかけてくれた
オペラ「カルメン」を聴いたからだという話を思い出しました。
しかも、それはソプラノのマリア・カラスが歌っているものだったそうです。

カルメンは通常メッゾ・ソプラかアルトの歌手が歌いますが、
声質によってはソプラノが歌うこともあるのです。
「カルメンだったらぴったりの歌手がいる」と
私は藤井さんの話を公演監督の松山郁雄さんや
春秋座のスタッフにしました。

幸いなことに松山さんも昔、彼女と共演していて、
直ちに賛成してくれたのです。
物事が決まる時というのは案外こんなものなんですね。
あぁだ、こうだと揉めたりする時は、
余りいい結果が出ないことが多いのです。
かくしてリサイタルよりもオペラ出演の方を優先することになりました。

12月17日(土)と18日(日)の2日間、
春秋座にて行われるオペラ「カルメン」は
初日が藤井泰子さん、
日目が並河寿美さんの主演が決まりました。
エスカミリオに折江忠道さん、
ドン・ホセに角田和弘さんといったベテランも出演してくれます。
カルメン速報

藤井泰子さんは4月1516日 と京都に来てくれて、
雑誌「Leaf」と京都新聞の取材を受けてくれました。
内容はいずれ掲載された時ご紹介しますが、
いずれも話が弾み、予定時間が大幅に伸びました。

「Leaf」では街中の写真まで撮っていただきました。
それだけ魅力があったということでしょうか?
藤井さんは劇場のスタッフからも好感を持って迎えられ
各担当者がやる気を起こしてくれています。
苦労人の藤井泰子さんが演じるカルメンが
どんなものになるのか楽しみです。

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ひとつだけ新情報を。

来年1オペラ「アンドレア・シェニエ」の作曲で知られる
ウンベルト・ジョルダーノの名前を取った記念劇場で上演される
オペレッタ「Scugnizza」の主役に藤井泰子さんが決まりました。
フォッジャという市にある由緒ある劇場での公演ですが
ナポリ訛りの悪ガキ娘を演じます。

女優としての演技力も買われたようです。


春秋座の「カルメン」は9月下旬頃チケットが発売されます。
ぜひご来場ください。


   (達人の館プロデューサー・春秋座顧問プロデューサー 橘市郎)

数多くのスターを輩出した、日本テレビの「スター誕生!」で
片平なぎさと一緒に優勝した
夏山美樹さん(優勝時の名前は梶原隆子)の
京都初コンサートが723(土)に岡崎 NAM HALLで行われますが、
そのチケット発売が427(水)午前10時より開始されます。

夏山美樹さんはチラシにありますように、
アイドルとしてデビューしたものの
ミュージカルやジャズに興味を持ち、
実力派の歌手を目指して40年歌い続けてきた達人です。

現在は東京の一流ライブハウスで歌いながら
後進の指導、笑いヨガの普及活動もしています。


natuyama
今回は
1部「映画音楽」
2部「私の好きな歌」
という構成で、絶妙なトークをまじえて歌いまくります。
チラシをご覧になりぜひご来場ください。

チケットお申し込み
達人の館    0757088930(電話)
        0757088934FAX)へどうぞ。

427(水)午前10時 発売
20160723-2


なお、521(土)の「江藤ゆう子 昭和を歌う-番外編-」のチケットは
14時の部    完売
17
時の部    残り3

となっております。
いずれの回も若干補助席が可能ですので、お問い合わせください。


昨日、はじめてMETライブビューイングを見てきました。
オペラ上演に携わっている者としては不勉強極まりないことですが、
午前10時からオペラを見る気にはなかなかなれなかったのです。
それに映画館でオペラを見る魅力を
余り感じなかったということもありました。
でも、ほとんど見る機会のないプッチーニの
「マノン・レスコー」という演目に惹かれました。
プッチーニの主な作品で見ていないのはこれだけだったからです。

オペラ・ファンの数から言っても、
10時からという上映時間から言っても
客席はガラガラだろうと、たかをくくって行ったのですが、
予想に反して客席は7割くらいの入り。
「家族はつらいよ」以上の盛況なのに、まずびっくりしました。
熱心なオペラファンがこれほどいるとは意外でした。

いよいよ上映開始。
冒頭にメトロポリタン歌劇場の壮大な客席が写り、
これから始まる公演への期待感を高めてくれます。
縦長の額縁舞台がオペラ劇場らしさを強調しているようです。
幕が上がると奥行きをいっぱい使った豪華なセット。
そして大勢の群集。全てが大きいのです。
お金がかかっているんだろうなと思わせます。

マノンを演じたオポライスは容姿抜群で奔放な役柄を的確に表現。
デ・グリューのアラーニャは一途な文学青年を力演していました。
幕間の舞台転換を見せてくれるのですが、
これがまるで建築現場の作業。
数十人のスタッフが動き回り、
巨大なセットを組み上げていく様はいかにもアメリカでした。
衣裳部屋も80人体制とのこと。
この世界規模の放映そのものが、
大スポンサーの存在と放映権収入をもたらしているようです。
これだけの公演は、そうでもしなければ成り立たないのでしょう。
これはこれでひとつのやり方だし、
実際このオペラは素晴らしいものでした。

しかし、日本でオペラをやる場合、
このやり方は通用しないと思いました。
日本人の繊細さ、日本人のつつましさを生かした工夫によって、
新しい味付けをしたオペラ上演をしていかないと無理です。
日本人の作ったフランス料理やイタリア料理が
本場のそれよりもうまいと言われることがあります。
日本の競馬やプロ野球は、
どこのそれよりもきめ細かくて面白いと言われることもあります。

日本人には自分たちの感性で
自分たちにあったものを作り上げていく才能があります。
平和というものに対する考え方も
武力に頼らない方法という独自のものをもっています。
何だか話が飛躍してしまいましたが、
METライブビューイングを見て思い知らされたことは、
日本人はアメリカ的なやり方を真似するのではなく、
日本人が持っている感性で独自のものを
生み出していかないといけないということでした。
地球の限りある資源を大切に、
自然と共生していこうとする日本人の感性に誇りをもち、
世界から尊敬されるような日本になれたらいいなあとつくづく思います。 

 (達人の館 プロデューサー 橘市郎)

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