一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

2016年11月

1129日、法然院で「ドロミズ」の作家
マリオ・アンドレア・ヴァッターニさんを囲む会がありました。
ヴァッターニさんは前イタリア総領事で、
日本に滞在した4年間の印象を小説にしたということです。
作家としては最初の作品ですが、
イタリア人が見た日本の魅力や
不思議な日本人の感性を描いたものでした。

実はこの作品の日本語訳を朗読したのが
春秋座オペラでカルメンを演じる藤井泰子さんだったのです。
「こういう会がありますがいらっしゃいますか?」と
声をかけられてスケジュールを見ると、
1週間でこの日だけが空いていました。
法然院の室内には入ったことがないし、
女優としても活躍している藤井さんが
どんな朗読をするのかも興味があったので、
満席の会に特別に入れていただきました。

法然上人の像の前に藤井さん、翻訳者、講師の方々が
居並ぶ風景はめったに見られないものでした。
藤井さんの朗読は声のトーンを押さえ、
作品に描かれた日本の風景を明瞭に伝えてくれました。
声そのものがいいので心地よく、
独特の世界を作っていたのはさすがです。

会終了後「総領事のお宅で、パーティーがありますので、
同行しましょう。あらかじめ了承してもらっていますので」と
お誘いを受けました。
ずうずしいとは思いつつも
藤井さんのご好意に甘えることにしました。
錚々たる方が50人くらい集まっての交流会。
それでなくともパーティーが苦手の私は隅の方にいると、
藤井さんが、ロンバルディ総領事や
イタリア文化会館館長のフォッサーティさん、
作家のヴァッターニさんに紹介してくれました。
名刺交換する間も、いろいろフォローしてくれたのです。
藤井さんのイタリアにおける存在が
如何に大きいかを知らされました。

「カルメン」がイタリア・オペラだったら、
この人たちに絶大な応援をしてもらえただろうなと
いささか残念な気がしました。
でも、その「カルメン」の告知を会の最初にしてくれたのです。
どこへでも出かけて行く大切さを教えてくれた1日でした。
藤井泰子さん、本当にありがとうございました。
(達人の館 代表 橘市郎)


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1118日から20日まで、春秋座で行われた
「立川志の輔落語会」は今年も満席でした。
思えば、全く紹介者無しで出演依頼の手紙を差し上げてから
年が経っているんですね。
駄目もとと思って出した手紙に快く、
出演OKの返事をいただいた時の感激は今でも忘れません。
それでも京都でやるということには師匠も慎重で、
リクエストした「中村仲蔵」ではなく、
通常の落語会を1回公演でのスタートでした。
2年後に「中村仲蔵」が実現したのをきっかけに
2回公演、3回公演と上演回数が増え、
今ではチケットが最も取りにくい人気公演となりました。

私は2年前から顧問プロデューサーという立場ですが、
当初の経緯があり、打ち上げにも声をかけていただいています。
8年間、志の輔師匠と打ち上げの席で対面出来たことは、
この上ない幸せでした。
お酒が入ると高座以上に面白い話が聞けるのです。
といっても師匠は全く乱れることなく、
高尚な笑いを提供してくれます。
私は元来下戸で過去7回は全くしらふで対話していました。
しかし、来年3月で春秋座との契約満了となりますので、
来年の公演の時は関係者としてではなく、
1観客として師匠の落語を聞くことになります。

そう思った途端、感傷も手伝い
「今晩は少しお酒を飲んでみようと決心しました」。
先月指揮者の星出さんと会った時も、
付き合い程度には飲んだのですが、
この日はビールをジョッキー(大)一杯、
紹興酒3杯(お猪口の大)をいただきました。
かつて作家の山口瞳さんが、
「酒を飲まない奴は人生の半分は損をしている」
という意味のことを書かれていましたが、
この日は素直に納得しました。
いつもより饒舌になり、楽しさが倍増したように思います。
真っ赤になっているのはわかりましたが気分は最高でした。
「これからは出来るだけ、付き合うぞ!」
などと思いつつ店を出ました。
この日は良く眠れたのも収穫でした。
志の輔師匠ありがとうございました。
8年目にしてやっと開眼したのも
師匠のムード作りのお陰です。

ところで、仲介者無しで手紙を送り、
快い返事をいただいた方が過去3人いらっしゃいます。
早稲田の大隈講堂でコンサートを引き受けてくれた
名テノールの故五十嵐喜芳先生。
ミュージカル「イダマンテ」の演出をしてくださった
3代目市川猿之助丈。
そして春秋座公演を実現してくれた立川志の輔師匠。
考えてみると皆さん人格者で、相手が無名でも、
ご自分で納得したらOKと言える方なんですね。
お陰さまでこの3人の方とは
長い長いお付合をさせていただきました。
本当にありがたいことです。

「山口瞳さん、損した半分の人生これから取り戻します」。
遅すぎますかねえ。

(達人の館 代表 橘市郎)

 


13日に行われた「ヴェルディ サロン・ライヴ」は
超満員のお客様で、初日を開けることが出来ました。
冨家さんのヴァイオリンと藤田さんのピアノは
生音の素晴らしさを満喫させてくれました。
予想の175パーセントの入りだそうで、
客入れに手間取ったり、ケーキが売り切れになったりと
ご迷惑をかけましたが、演奏はばっちり。
お客様の温かい拍手が印象的でした。

冨家さんのトークは初々しく、
しかも無駄がないので好感度を高めていました。
ヴァイオリンを習っているお子様が
ご家族といっしょに見えていたのもうれしい光景でした。
冨家さんにはまたぜひ登場して欲しいと思っています。
次回はポップスや歌物も入れて、
より楽しいライヴをご披露していただけると思います。
冨家さん、藤田さんありがとうございました。

さて、1126(土)には「江藤ゆう子 昭和を歌う」で
御馴染みの江藤ゆう子さんが登場してくれます。
江藤さんは1210日にロームシアター サウスホールでの
コンサートが控えている中、
特別に出演してくれることになりました。
私への友情出演といってもいいでしょう。

今回はシャンソン、スタンダード・ジャズ、
ポップスなどを中心に歌ってくれます。
ピアノ伴奏がずーっとコンビを組んでいる笹井順子さんなので、
息のあった演奏を聴かせてくれることでしょう。
江藤さんのトークはどこでも大受けなので、
ライヴ特有の気楽なひと時を過ごしていただけそうです。
江藤さんは、冨家さんのライヴにも足を運んでくださり、
会場の雰囲気や響きを確かめていました。
当日はかなり混雑すると思いますので、
いらしてくださるお客様には予約されることをお奨めします。

今度はケーキも多めに用意されると思いますので
自慢のコーヒーとケーキをぜひ味わってみてください。
回目のライヴが終わったところで、
来年もこのライヴを続けたいと
オーナーの続木さんより、オーダーがありました。
将来有望な若手のアーチスト、
志の高いベテラン・アーチストを織り交ぜて
プログラムを組んでまいりますので、
どうぞ応援のほどよろしくお願いいたします。

(達人の館 代表 橘市郎)

以前ご紹介した「ヴェルディ サロン・ライヴ」が
いよいよ1113(日)に初日を迎えます。
これに先立ち(火)に冨家聖香さんが音響テストを兼ね、
伴奏者の藤田菜央さんと音合わせをしました。

カフェという会場で、どんな響きがするのか、
隅々まで生音が届くのかといささか心配もありましたが、
予想以上にいい響きがして、
どこで聴いてもきちんと音が届くので安心しました。
天井が高いために、以前は響き過ぎの感じがあったのですが、
椅子やテーブルが入ったことによって、音が落ち着きました。
また、通路側の壁面を半分で止めたのも、
響きの上で効果があったようです。
これならコンサートホールにも負けない、
いい生音が聴けると思います。

回目がヴァイオリンというのも音響効果を味わうのにぴったりです。
冨家さんの演奏は感性豊かで、
ヴァイオリンの音色が何ともいえない温かさを持っています。
かと思うとあの細いからだからなぜ?というくらい
迫力のある音が奏でられます。
テクニックだけけでしたら、ほかにも才能ある人はいるでしょうが、
これほど、心のこもった演奏をする若手のヴァイオリニストに
出会ったことはありません。
お客様がどんな反応を見せてくれるか楽しみです。

伴奏の藤田さんも冨家さんとの息がぴったりで、
時々適切なアドヴァイスを送っていました。
仲が良くお互いに相手を信頼している雰囲気が伝わってきました。
評判のおいしいコーヒーに素敵なヴァイオリンの演奏をぜひお楽しみください。

サロン・ライヴが来年以降も続けられるかどうかは、
今年行われる回の成果にかかっています。
どうぞよろしくお願いいたします。

コンサートの内容はこちら


ヴェルディ


(達人の館 代表 橘市郎)


   ♬ 予定演奏曲目 ♪

クライスラー:愛の悲しみ
サラサーテ:アンダルシアのロマンス
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン、ほか



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ヴァイオリン 冨家聖香
3歳よりヴァイオリンを始める。
京都市立京都堀川音楽高校を経て、京都市立芸術大学卒業。
第17回京都子どものためのヴァイオリンコンクール銀賞。
第14回大阪国際音楽コンクール入選。
第8回ベーテン音楽コンクール第5位。
第20回熊楠の里音楽コンクール第3位。
ミュージックセミナーin TOMAMにてジェラール・プーレ氏、
オレグ・クリサ氏のマスタークラスを受講。
堀音父母の会主催「第16回フレッシュコンサート」や
京都芸術祭音楽部門実行委員会主催
「新進演奏家によるデビューコンサート」など多数の演奏会に出演。
これまで村瀬理子、池川章子、泉原隆志の各氏に師事。

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ピアノ 藤田 菜央
兵庫県神戸市出身。5歳よりピアノを始める。
兵庫県立西宮高等学校音楽科を経て、
京都市立芸術大学音楽学部卒業。
第29回兵庫県高等学校独唱独奏コンクール銀賞。
日本クラシック音楽コンクール全国大会入選。
第12回宝塚ベガ学生ピアノコンクール大学生部門入選。
第15回ショパン国際ピアノコンクールin Asia大学生部門アジア大会奨励賞。
第7回神戸芸術センター 記念ピアノコンクール本選入選。
第16回ローゼンストック国際ピアノコンクール第5位。
兵庫県立美術館主催「美術館の調べ」、
日本芸術センター主催「第110回神戸芸術センター定期演奏会」において
ソロリサイタル出演。
これまでに細川恵美子、坂本恵子、坂井千春、
イリーナ・メジューエワ、田村響の各氏に師事。

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