一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

2018年03月

世の中、証人喚問や北朝鮮幹部の中国訪問で騒然としていますが、
敢えてここでは文化的な話題をご報告しようと思います。
23(金)、私は久しぶりに文楽を見に行きました。
「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」は
帯屋の主人長右衛門が、わが子のように年の離れたお半と
男女の関係になり、子供まで宿してしまうというショッキングなお話。
しかもお互いに惹かれあい、
最終的には義理人情との板ばさみになり、心中に追い込まれます。

この悲劇の結末が桂川で展開されるので、
比較的近いところに住む私としては、
臨場感を覚えずにはいられませんでした。
この時代の話が生々しく感じられたのも
京都に移り住んだからこそだと思いました。

*

3月24(土)は散歩代わりに、
徒歩20分位の所にある竹林公園に行ってきました。
引越しした当初より、気にはなっていたのですが、
地元民の憩いの場所くらいに思っていたので、
バスに乗ったままいつも素通りしていたのです。

気軽に公園に入っていくと少し上ったところに
管理事務所のような建物がありました。
受付があったので記帳していると
係りの方が話しかけてくれて、竹の魅力を語り始めました。

いろいろな竹の標本を示しながら抜群の解説を披露。
そのまま公園1周の出発点に案内してくれたのです。
公園内は広く、起伏に富んだ地形に
無数の種類の竹が植えられていました。
歴史的な石橋、無数の石仏もあり、見所も満載。
公園内は結構な広さで1周するとかなりの距離がありました。
受付のあった建物に戻ると広い和室や休憩室もあり驚かされました。
これで無料なのです。またお奨めのスポットを発見したと思います。

*

3月26(月)は朝5時に起きて、東京へ日帰りで出かけました。
高校の1年後輩にあたる星出豊さんの
「指揮者生活50周年記念祝賀会」に出席するためです。
彼のことは前に書いたことがありますが、
60年来の友人で、彼が書いた「ジャコモ・プッチーニ」という本を

「オペラの道へ誘ってくれた友人に感謝しつつ 星出豊」

とサインをいれて贈ってくれた人なのです。
指揮者としては決して名門とは言えない音楽大学の出身でありながら、
努力と才能で一流となった彼は素晴らしい実績を残しています。
いずれ彼のことはまた書きますが、
オペラの指揮をさせたら日本一と思っています。
当日は200人近い人がお祝いに駆けつける盛大な会でした。
彼は大勢の若手指揮者を育て、
この日の会も「星出会」と言われる若手指揮者がセッティングしたものでした。
彼は良き教育者でもあったのです。
突然指名されたせいもあり、
満足なスピーチが出来なかったのが悔やまれます。
彼の米寿のお祝いの時にはリベンジするつもりです。

(一般社団法人 達人の館   代表 橘市郎)

3月16(金)の「筑前琵琶 上原まり平家物語を語る」が無事終了しました。
13時の回はともかく、17時の回は動員に大苦戦しました。
どちらかといえば年配の方を対象にしたものは
夜にかかると難しいようですね。
でも、上原まりさんは嫌な顔ひとつせず熱演してくれました。
平家物語はまりさんの十八番なのでもちろん素晴らしかったのですが、
今回初めて聴いた「雪女」は筑前琵琶の可能性を暗示する秀作でした。

作詞家の岩谷時子さんがまりさんのために書いてくれた作品ですが、
「夕鶴」に似た民話を基にしたストーリーは、
筑前琵琶にぴったりでした。
口語体ゆえに言葉が良く分かり、
作詞家らしく短いながらドラマチックに仕上げられていました。
若い人にもアピールできる作品として注目したいと思います。

*

3月17(土)は東京藝術大学音楽学部同声会京都支部主催の
62回新人演奏会を聴きに府民ホール アルティに行ってきました。
この欄でも何回もご紹介した井上大聞さんが
トリで出演するというので、夫婦揃って出かけました。

堀川高校を卒業し、ストレートで東京藝大に入った逸材は期待に違わず、
京都に帰る度に進境を見せていたので、今回もとても楽しみでした。
お母様も、おばあさまもさすがに緊張されていたようです。
ピアノ、テノール、ヴァイオリン、クラリネットといった演奏者が終わって、
最後に登場した大聞さんが中央に立った時、私は目を見張りました。

何という貫禄!その立ち姿は自信に満ち溢れ、
どう見ても30歳を超えたベテランのバリトン歌手のものでした。
伴奏のこれまたお馴染みの坂口航大さんが小さく見えたほどです。

彼が選んだ曲目は、R.ヴォーン・ウィリアムズの<旅の歌>。
私は「何故オペラのアリアを歌わないんだろう?」などと思っていたのですが、
彼が歌い始めると彼の声質や音域に
ぴったりの選曲なので脱帽してしまいました。
しかも意外にドラマチックな曲が多く、
大聞さんのいいところが出ていたのです。
堂々とそして伸び伸びと歌い続ける彼の歌唱に、
会場は水を打ったようにシーンとしていました。
私は不覚にも涙ぐんでいたようです。

高校を卒業して年、
一人の青年がどうしたらこんな成長を遂げられるのでしょう?
もちろん家族の方をはじめとする支えがあったと思います。
でも、本人の努力無しにこんな変貌を遂げられるわけがありません。
「好きこそものの上手なれ」
私はこの言葉を改めて思い起こさずに入られませんでした。

*

3月18(日)はヴェルディ・サロン・ライヴで
北條エレナ(ヴァイオリン)、山崎愛沙子(ホルン)、
矢野百華(ピアノ)の演奏会がありました。
ブラームスのホルン・トリオという
なかなか聴けない名曲に触れることが出来ました。
北條さんの美しく感性溢れるヴァイオリン、
山崎さんの力強く繊細なホルン、
矢野さんのダイナミックで奔放なピアノ。
気持ちのいいトリオでした。
中でも矢野さんのシンプルで分かりやすい曲目紹介は好感が持てました。
また有望なトリオが出現した感じです。
世の中すさんでいるこのごろ、若いアーチストの演奏は
一服の清涼剤といっていいでしょう。

(一般社団法人 達人の館  代表 橘市郎)

ここの所、新聞もテレビも財務省が
森友文書を改ざんした問題で持ちきりです。
このブログがアップされるころには、
どのような状況になっているかは予測もつきません。

米朝首脳会談のニュースも流れました。
世の中全体が「どうなる?どうなる?」と
いった感じは決して平穏とは言えませんね。

この16日、上原まりさんが筑前琵琶で平家物語を語りますが、
「諸行無常 盛者必衰」は現代でも生きている言葉のような気がします。
この時点で私見を述べる事は控えますが、
一般論として一強がもたらす弊害が多々あるということはいえると思います。
人が自信過剰になり傲慢になる。
周りの人が忖度するようになる。
この原因はとりもなおさず一強がもたらしたものと言っていいでしょう

。国内の政治が真っ当な形で落ち着くことと、
オリンピックで味わったスポーツマン・シップの感動が、
世界の平和に繋がることを切に願わずにはいられません。
(一般社団法人 達人の館  代表 橘市郎)

(土)と(日)はつの演奏会を聴いてきました。
前者は「第272017年度の青山音楽賞授賞式」での受賞者の演奏。
後者は第回「京都ゆかりの若き演奏家たちによる 協奏曲演奏会」でした。
どちらも刺激的で、これからの音楽界を背負って立つ
若き才能がきらきらと光る演奏会でした。

*

まずは青山音楽記念館で行われた授賞式。
新人賞はピアノの黒岩航紀さんとチェロの森田啓佑さんでした。
記念演奏会では、黒岩さんがリストの
「ハンガリー狂詩曲 第2番~Ⅴ・ホロヴィッツ編曲」に挑戦。
難曲として知られる名曲を奔放に演奏してくれましたが、
ともすると聴きなれた曲を避ける演奏者が多い中、好感が持てました。

チェロの森田さんは地味ながら、誠実できめ細かい演奏が心を打ちました。
青山賞には三味線の本條秀慈郎さんと
ピアノのアレクセイ・グリニュークさんが選ばれましたが、
お二人とも実力、実績とも素晴らしく、ただただ聴き惚れました。
バロックザール賞はアンサンブル・レ・フィギュールのみなさんと、
テディ・パパヴラミ(ヴァイオリン)さん、
岡田真季(ピアノ)のデュオが受賞。

前者はチェンバロをはじめとする古楽器を駆使しての演奏でしたが、
時間が止まったような静かな音に心が洗われるようでした。
後者のデュオは個々の優れた技術はもちろんのこと、
息のぴったり合った演奏は秀逸。
国際的なレベルの高い演奏を、
200人しか入れない空間で聴けたことは贅沢この上ないものでした。

*

日、府民ホール アルティでのコンサートには
カフェ・ヴエルディでお馴染みのアーチストが何人か出演していました。
プロデュースと指揮を務めた坂口航大さん、
ソプラノの講殿由紀奈さん、バリトンの井上大聞さん。
オーケストラの中にも出演してくれた人がいたかもしれませんね。

私は講殿さんからお誘いを受けたのですが、
自分でも聴きたいと思っていた企画だったのです。
1部が「リゴレット」のハイライト、
2部がモーツアルトのフルート協奏曲、
3部がラフマニノフのピアノ協奏曲というプログラムは
変化に富んだもので、なかなか聴けないものだからです。

若い人中心とはいえ30名ほどのオーケストラ、粒ぞろいの歌手、
才能溢れるソリストを集めて3000円という入場料は良心的過ぎます。
実際、演奏の質もハイレベルなもので感動しました。
坂口さんの指揮ぶりは的確で、パワフルな面と繊細さを兼ね備えていました。
オーケストラも若々しいエネルギッシュな演奏で応えていました。
歌手を含めたソリストたちの好演も注目すべきまのでした。

多分、今日の出演者たちは、
明日の京都音楽界をリードしていく人たちだと確信しています。
京都に文化庁が移転したことですし、
「文化の中心は京都」と言われるよう頑張ってほしいものです。

(一般社団法人 達人の館  代表 橘市郎)

オリンピックが終わり、文字通り「祭りの後」の寂しさを感じています。
でも、何時までも感傷に浸っているわけにはいきません。
3月16(金)には「上原まり 筑前琵琶で平家物語を語る」が控えています。
13時と17時の2回公演ですが、内容が違いますので、
お時間のある方はぜひ両公演をお楽しみください
内容につきましては前回のブログにチラシが載っていますので、
ご参照いただければと思います

*
さて、今回は二つ朗報がございます。
ひとつはヴェルディ・サロン・ライヴですっかりお馴染みになった
テノールの井藤航太さんが、11月に行われる
春秋座オペラ「蝶々夫人」のオーディションで
見事、ピンカートン役に選ばれました。
この公演ではイタリアから素晴らしいテノールを
名招聘することになっていますので、
回公演を井藤さんと日替わりで競演することになります。
井藤さんの魅力に毎回酔いしれてくれているお客様、
ぜひ応援してあげてください。

井藤さんがこれをきっかけにして、一流のテノールとして
認められることを切に願っています。

*
もうひとつは、一昨年イタリアから来日して
春秋座オペラのカルメンを演じてくれた
藤井泰子さんが3月5日(月)のテレビ東京で紹介されます。
番組名や時間など、はっきりしたことは分からないのですが、
藤井さんがイタリアで奮闘している姿を追いかけたドキュメンタリーのようです。

藤井さんはその後もイタリアで、レギュラー番組に出演したり、
ミュージカルの主役を演じたりしていらっしゃいますが、
今年の春秋座オペラ「蝶々夫人」の主役も川越塔子さんと
ダブル・キャストで演じてくれることになりました。
イタリア文化会館―大阪との協力も実現しそうですし、
今年の春秋座オペラは何かと話題満載の公演になりそうです。
どうぞお楽しみに!

(一般社団法人 達人の館  代表 橘市郎)

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