今日、久し振りに本屋さんに立ち寄りました。
昔はよく本屋さんで新刊本や小説を買ったものですが、
久しくそういうことのない生活が続いていました。
何故か良く分かりませんが、心にゆとりがなくなったせいでしょうか?
あまりにも色々な本が出ており、
買うにしてもどれを選ぶべきか判らない自分に、
あきらめのような気持ちが沸いてきたのでしょうか?
それとも、自分に好奇心が無くなってしまったのでしょうか?
これが年齢によるものなのかなあと思いながら、
結局は何も買わずに本屋さんを後にしたのでした。
ごめんなさい本屋さん。
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9月23日のヴェルディ・サロン・ライヴは、
メゾソプラノの倉橋緑さんの初登場でした。
彼女はイタリアから帰国間もない方ですが、
良く響く美声でお客様を魅了してくれました。
喋る声はか細いのに、歌になると堂々とした声で将来性を思わせるものでした。
これからがとても楽しみな歌手の一人として注目したいと思います。
ピアノの竹村波留加さんは、はっきりした喋りで演奏も堅実。
しっかりと倉橋さんを支えてくれていたと思います。
このお二人にもまた、日をおいて再登場していただきたいものです。
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この日は、春秋座で
「猿翁アーカイブにみる三代目市川猿之助の世界」第3回フォーラムが行われ、
何と久し振りに、市川猿翁が東京から来てくださいました。
サプライズということで、最後に突然登場した猿翁を見て、
お客様はびっくりされたと思います。
皆様ご存知の通り、病に倒れた猿翁が
もう春秋座に来てくれることはないだろうとあきらめていたはずですから。
「本日はもうお一人特別ゲストがいらっしゃいます」と云う
司会者の声と共に中割が上がると、
そこには車椅子に座った猿翁が居て、
歌舞伎役者特有の見得を切って観客の声援に応えたのです。
お客様は興奮してスタンディング・オべイション。
不自由な身体で一生懸命見得を切る猿翁に、
私は計り知れない役者魂を見ました。
何時までも続く拍手。私の眼からは自然に涙が溢れてきました。
緞帳が降りるや私は舞台の方に駆けつけ猿翁と握手をし、目を合わせました。
以前に較べ少しふっくらとされたようでした。
周りのスタッフも私と猿翁の関係を知っていて、
帰り際にツーショットの写真も撮ってくれました。
言葉は交わさずとも、舞台袖から車椅子のまま、
大型車両に乗って去って行く猿翁を見送りながら、
私は本当の「役者の中の役者」に出会えたと思い、頭を下げ続けていました。
(一般社団法人 達人の館 代表 橘市郎)