達人の館

   本物の芸をじっくりと味う、大人のためのコンサートを企画・主催しています。

カテゴリ: エッセイ

先日久し振りに大塚博堂のCDを聴きました。
彼は以前お世話になっていたMさんがマネージャーをしていた歌手ですが、
改めてその才能に感動しました。
彼の生涯は19441981年というわずか38年間の短いものでしたが、
心を揺さぶる歌の数々は忘れることが出来ません。

シンガー&ソングライターが出て来た時代、
彼は東洋音楽大学(現東京音楽大学)中退後にデビューしたものの、
なかなか売れず「ダスティンホフマンになれなかったよ」で
再デビューしたのは32歳の時でした。
それから37歳で脳内出血のため急逝するまでの5年間、
レコード化された曲は約80曲にもなります。
音域の広い、情感のこもった声は
クラシックの歌手には無いナイーヴさを持っていました。

私は彼の歌を聴いていると
一人の青年が懸命に人生を生きている姿が浮かんできます。
私が1940年生まれなので、ほぼ同世代だったことになります。
人生の充実度は長さではないのは当然ですが、
彼が元気でいたらと思うと残念でなりません。

*

香港でのデモ、韓国の政局、トランプさんの疑惑、
北朝鮮のミサイル実験、東京電力の混乱。
どれをとっても暗いニュースばかり。
一方でラグビーにおける日本の快進撃やゴルフ、
陸上、テニス、野球、競馬といったスポーツ界での明るい話題。
国会が始まると言うのに頭の中は混乱しています。
こんな時こそ知らないうちに
あらぬ方向に導かれぬよう注意しないといけませんね。
冷静になりたいものです。

(音楽・演劇プロデューサー 橘市郎)

9月27日から29日の3日間は春秋座で立川志の輔公演が行われ、
私は初日と楽日を拝見してきました。
特に初日は師匠が楽屋入りして
舞台チェックをするさまを見させていただきました。
皆さんはタレントとしての師匠は良くご存知ですが、
演出面での存在は案外知られていないと思います。

しかし、落語が全くの独り舞台だけに
その演出ぶりは他の舞台芸術以上に、ご本人の感性にかかってきます。
師匠は楽屋入りと同時に舞台チェックに入ります。
高座の位置、袖幕や文字の状態。照明のあたり具合や色、そして明るさ。
音響の大きさや聴こえて来る方向感、音質。そして明瞭度。
こう書くと細かいため、時間がかかるような気がしますが
実に手短にチェックしOKを出していくのです。
その手際の良さは、いろんな演出家の稽古を見慣れている私も
感嘆せずにはいられません。

そしてお弟子さんや共演者の音響を聴いて、楽屋に入るのです。
劇場での落語というものがこれほど緻密に演出されているとは
お客様にはお分かりいただけないと思うし、
師匠もこういう事を書かれるのは嫌がるかもしれません。
しかし落語というものが昔のように単に寄席の演芸ではなく、
世界に誇るべき、一人芝居の藝術であることをお伝えしたかったのです。

演技においても師匠の熱演は単なるお笑いを超えた迫真そのものです。
高座を降りてくる健康な落語家が憔悴しきっているのを、
私は今まで見たことがありませんでした。
私は歌舞伎の猿翁と落語の志の輔師匠というお二人と出会えて
本当に幸せだったと思います。
来年も春秋座での「立川志の輔落語」を楽しみに頑張るつもりです。
そして来年はパルコ劇場での公演も再開されます。
健康管理に万全を期してくださいますように祈っています。

(音楽・演劇プロデューサー 橘市郎)

今週921(土)はいよいよガラコンサートの本番です。
出演するメンバーは、恐らく今後はありえないほど豪華です。
オペラ好きの人にとっては見逃せないコンサートだと自負しています。
オーケストラの稽古が17日から始まり、徐々に関係者が増えてまいります。
そして20日にゲネプロがあり21日に本番を迎えるわけです。

もちろんお客様には本番を楽しんでいただく訳ですが、
われわれ作り手にとってはこの課程が生きがいと言ってもいいくらい重要です。
作品がだんだんと仕上がっていくことが喜びなのです。
そして本番当日、万雷の拍手をいただいた時「良かった!」と満足する。
そんなことの繰り返しが、これまで何度経験されたことでしょう。
どうか今年もお客様には心の底から楽しんでいただけたら幸いです。

*

台風の影響で千葉県の方たちの中には、
未だに電気がつかない生活が続いています。
自然災害と言っても、仕方が無いでは済まされない事態です。
戦艦や戦闘機にお金をかけることよりも、
こういうことに対する備えの方が大切だと思うのですが。
人間が人間を敵と見なし、
お互いに警戒を強めるなんて哀しいですね。
ローマ法王のように人間を信じ、
お互いを尊敬する時代がやってくることを願っています。

「歴史は繰返す」と言って、
いつまでも人間同士が争っている時代は、もう終わって惜しいものです。
「衣食足りて礼節を知る」が真実であるならば、
お互いに礼節を知るべく、貧富の差をなくする努力をするべきなのでしょう。
「自分だけが豊かになりたい」ではいつまでも争いが耐えません。
お互いに分かち合うという精神が大切なのではないでしょうか。
年金老人になってからそんなことを言っても遅いかな。

(音楽・演劇プロデューサー 橘市郎)



 

毎日、往年のオペラ歌手を聴きまくっているので、
9月8日の夜にCD「小田和正・自己ベスト」を久し振りに聴いてみました。
もう随分前に収録されたものですが、
全く新鮮で聴き応えあるものでした。

もともと澄んだ美声で、テノールのポピュラー歌手と思っていましたが、
それ以上に作曲家としても詩人としても
非常に優れた才能を持っていることを再認識しました。
彼の旋律に乗せられた日本語は、実にアクセントが正確です。
それ故に歌詞が大変分かりやすく、
詩の内容が素直に伝わってきます。
思わず過去の風景が思い出となって蘇って来るのです。
フォークソングのような素朴さを持ち、
洗練された歌謡曲のような世界をも感じさせるんですね。
それに音楽的には非常に洗練された新しさがあるので、高尚な感じがする。
何を言っているのか分からない曲や
どこの国の人が歌っているのか分からない曲とは明らかに違うのです。

私は小田和正というミュジシャンを高く評価したいと思います。
そしてクラシックでも、ポピュラーでも
優れたものは同じように評価されねばならないと改めて思います。
小田さんとは全くご縁がありませんが、
この人と仕事をご一緒する機会が無かったことは
かえって幸せだったかもしれません。
いつまでも一ファンとしていられるからです。

(音楽・演劇プロデューサー    橘市郎)

日のサロン・ライヴは女性歌手人による「オペラ名場面集」でした。
チラシに予告された曲目はむしろ地味なもので、
実際はプッチーニやヴェルディーの
有名なアリアや重唱がちりばめられていました。
4人の女性歌手は皆立派な声だったし、
ピアニストも伴奏者というよりはむしろソリストいった感じでした。
期待していた以上に贅沢なライヴにお客様も大満足していました。

確かに有名なアーチストの演奏を聴くのも楽しいけれど、
これからのオペラ界を背負って立つルーキーの演奏を聴くのも
いいものだとつくづく思いました。
これって全国高校野球を甲子園で見るのに
近いものがあるのではないでしょうか?
「若いって素晴らしい」と言う歌がありましたが、
まさにその楽しみを満喫した一夜でした。

すでにこちらのサロン・ライヴからは
何人かの有望アーチストが出ていますが、
これからも隠れた登竜門として認められていくことを目指したいと思います。


日は「春秋座オペラ・ガラコンサート」の初稽古が新大阪で行われます。
関西在住の何人かの歌手と公演監督の松山郁雄さん、
指揮の奥村哲也さんなどによるものですが、
久し振りの方もいるので私も楽しみです。
公演の15日前からガラ・コンサートの稽古が始まると言うのも珍しいのですが、
それはただ歌うだけではなく、いろいろと仕掛けがあるからでもあります。
どんなものになるか期待していて下さい。

(音楽・演劇プロデューサー  橘市郎)



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