一瞬の静寂

音楽・演劇プロデューサー・橘市郎のブログ。日々思ったことを綴っています。 東宝(株)と契約し、1973年にプロデユーサーに。1981年独立後は、企画制作会社アンクルの代表をつとめ、中野サンプラザからの委嘱で「ロック・ミュージカルハムレット」「原宿物語」「イダマンテ」を、会社解散後は「ファンタステイックス」「ブルーストッキング レデイース」などのミュージカルを制作。 2001年京都芸術劇場の初代企画運営室長。

カテゴリ: エッセイ

718日、「戦争法案は違憲だ」「アベ政治は許さない」と言う
スローガンのもと開かれた集会と
それに続くパレードに参加して来ました。

35
度を超える暑さの中、4000人以上の人が集まりました。
いろいろな組合の参加以外に、
普通のおじさん、おばさん、おじいさん、
おばあさん、若者の参加が目立ちました。
普段こういう集会に参加したことのない人、
なかなか声を出して抗議することが
出来ない人が集まってきた感じでした。

よほど安部首相のやり方に危機感を募らせたのでしょう。
国民の命と幸せを守るためと言いながら、
国民大多数の反対を押し切り、
戦争の出来る国へと転換する法案を単独で通そうとする
「アベ政治」に怒りを覚えたに違いありません。

如何にしたら戦争をしないですむかと言うことが一番大切なのに、
仮想敵国を作り、刺激して、
余計戦争へのリスクを高めるやり方に
国民の多くは心配をしているのです。

ドイツでは後方支援と言って派兵された人々が
実際に50人以上亡くなっています。
自衛隊の方たちは、自然災害の際、事故発生の際、
現場に急行し危険に身をさらしながら働いてくれています。
この人たちを遠く離れた戦地に送り、
危険にさらすことは許されません。

文化人、弁護士さん、お医者さん、
大学や学校の先生、学生、
妊娠しているお母さん、
それぞれが戦争法案は違憲だと主張し、
抗議に立ち上がっています。

新国立競技場の問題を白紙に戻す決断をしたように、
この法案も白紙に戻す勇気を持ってほしいものです。
いや、国民の声が高まれば
そうせざるを得ない可能性がでてきました。
公明党の支持団体である創価学会からも、
この法案には疑問の声が出てきているそうです。
参院での議論を党派を超えた一人ひとりの良識を持ってしていただき、
衆院に戻された時には、与党の中にも
反対者が出てくることを期待しています。

間接民主主義といえども、
国民大多数の考え方は直接為政者に届くはずです。
またそうでなければ、独裁政治になってしまいます。
日本が第2次世界大戦の誤ちを繰り返すか、
平和憲法の下に個別自衛権以外に、武力行使をしないと
世界に改めて宣言するかの瀬戸際です。

後悔しないように、しっかりと意思表示して行きたいものです。
(達人の館  代表  橘市郎) 

今から55年前、私は大学の3年生でした。
1960
年の安保闘争の際、
国会議事堂の前の座り込みに参加した記憶が甦ります。
結果はどうであれ、自分の考えに基づいて
行動を起こして良かったと思っています。
55
年経って75歳になった今、同じように自分の考えを意思表示し、
行動を起こすことの必要を感じています。

このブログでも何度となく書いてきましたが、
日本の憲法9条が、今ないがしろにされようとしています。
この不戦の誓いこそ、普遍的な平和主義だと信じています。
世界情勢が緊迫すればするほど、
この誓いを守ることがお互いの信頼につながり、
戦争を抑止することになるのです。

憲法を文化と考えるなら、
9
条こそ世界遺産に登録されるべき傑作です。
海外に派兵したり、武器を送り込んだりして、
積極的平和主義などというのではなく、
憲法9条 を各国の憲法に入れ込む働きかけをする方が
真の「積極的平和主義」ではないでしょうか?

国連で胸を張ってこういった言動を取る
日本の総理大臣が出てきてほ しいとずっと願っています。
理想主義だとか子供だましのような甘いことをいうなと
非難しているようでは世界から永遠に戦争はなくなりません。

本当は世界中の国々が、
憲法9条を守ってきた日本の首相が
こうした音頭取りをしてくれることを願っているのかも知れません。
そういう旗を振ることが出来るのは日本だけだからです。

核廃絶についても同様なことが言えます。
日本が持っているアドヴァンテージを有効に使うことです。
世界平和を実現する可能性を持った宝を、
自ら捨てようとする動きには黙っているわけには行きません。
「治安が悪くなって来ているので、
身を守るため、一家に一丁拳銃を持ちましょう」
こういった考え方が一番危険だし、悪循環を生むのです。
世界の国々がこぞって日本の9条を憲法に取り入れ、
戦争のない地球になる。
夢のようですが、決してありえない道筋ではありません。
日本国内だって、かつては戦さに明け暮れていたのです。

というわけで、私はこの18(土)13時半から
円山音楽堂で開催される憲法9条を守る会に参加することにしました。
デモにも加わり、自分の意思表示をしたいと思います。
達人の館が企画するコンサートも、平和だからこそ実現出来るのですから。 

(達人の館  代表  橘市郎)   

今日も国会で審議されている集団的自衛権行使について
私なりに意見を述べさせていただきたいと思います。
「今このように世界情勢が緊迫している以上、国民の安全と命を守るために…」
と首相はおっしゃいますが
自衛隊が紛争中に機雷を撤去しに行ったり、
後方支援という名目で武器、弾薬を送り込むことが、
本当に平和に繋がるのでしょうか?

現状がこうだから、ことと次第では日本もいっしょになって
戦争のできる国になるというのが積極的平和主義なのでしょうか?
「こうしたいと宣言した後に、国民の圧倒的支持を受けたので、
法案成立を進めている。それが民主主義というものでしょう」
という論理も気になります。
第2次世界大戦の直前、日本は国を挙げて戦争に向かっていました。
ごく少数の人がマークされながら異論を唱えましたが、
結果はご覧のとおりです。
戦争は一度始まってしまったら、ルールも道理もありません。

不信と憎しみが渦となって、人々を狂気に導きます。
核が拡散している現代において第3次世界大戦が始まったら
勝ちも負けもない、人類は破滅します。
本当に平和を希求するなら、
如何に戦争が起こらないようにするかを考えなくてはいけません。
アメリカもロシアも中国も世界中が悩んでいます。

抑止力を高めるためにお互いに軍事力拡張をしなければならない現実。
さらに軍事同盟を形成すると同時に仮想敵国を作る。
これは第2次世界大戦前夜に見られた現象です。
あの時は日本で開催されることになっていたオリンピックも中止になりました。
お互いを牽制しながらどんどんきな臭くなっていくのが危険なのです。
悲惨な体験をしたから、もう2度と戦争はしたくない。
そのためには憲法第9条が必要だったのです。

これはアメリカに作らされたという人もいます。
だったら余計アメリカには第9条が印籠となります。
「あなたたちと一緒に作った憲法があるために、
私たちは専守防衛以外に軍事力は使えません」と
主張できるではありませんか。

日本は、自分からは決して攻撃しないという信用を得ること、
日本は常に中立で心のそこから平和を願っていると
尊敬されることが最大の防御なのです。
自衛隊のかたが1人でも殺されたら、
自衛隊のかたが1人でも人を殺すようなことがあったら、
事態は予測できません。

とにかく戦争に巻き込まれないこと。
憲法9条という伝家の宝刀を使って、
人間同士が殺しあうことの愚を世界にアピールすること。
私はそれを願っています。
人間同士が仲良くするために決して欠かせないのは、
相手の立場になって物事が考えられること、
相手が嫌がることを敢えてしないということです。
お互いに信頼しあうことが積極的平和主義だと私は思います。
それを堂々と実現してくれる政治家の登場を願わずにはいられません。
達人の館 代表 橘市郎

先日、渡辺プロダクションの創設者、
渡辺晋さんの業績を讃えるテレビ番組がありました。
日劇のプロデューサーをしていた時、
共同で3本のミュージカルを制作したこともあり、
特別な思いで見させていただきました。

私が早稲田の後輩であることもあったのでしょうか、
何かと目にかけていただいたことが思い出されます。
天地真理さんを主役にしたミュージカルを作ろうとした時、
私はトーマ作曲のオペラ「ミニヨン」を下敷きにして
「君よ知るや南の国」という作品を作ることを提案しました。

錚々たる先輩方の企画が出ていたのにもかかわらず、
渡辺晋さんは私の企画を取り上げてくれたのです。
にもかかわらず、私は生意気にも、
自分が立てた企画ということで独走しました。
キャストもスタッフもほとんど独断で決めていき、
東大病院に入院中の渡辺社長に報告のみしておりました。
自分は東宝のプロデューサーであり、
渡辺プロの社員ではないというプライドもあったのでしょう。
社長は次の作品「私はオディーヌ」(小柳ルミ子主演)でも
私のやり方を黙って見てくれていました。
ところが最後の打ち上げの日時や場所を伝えた時、
「何故私に相談しないで、決めてしまったのか?」と諌められました。
今までマイペースでやってきた私は
その時素直に謝れなかったのを覚えています。
しかし、今は、もっといろいろと相談していたら、
結果が違っていただろうなと大人の反省をすることが出来ます。
渡辺晋という大プロデューサーに対し、
もっと謙虚であるべきでした。
これを若気の至りというのでしょうね。

それにしても「君よ知るや南の国」は大作だったと思っています。
脚本・田波靖男/演出・中村哮夫/作曲・宮川泰/
作詞・片桐和子/振付・県 洋二というスタッフは
いい仕事をしてくれました。
また、キャストの天地真理はやはり魅力的です。
当時歌謡曲歌手としての力量を低く見ている人もいましたが、
どうしてどうして今聴いてもその歌唱力は素晴らしいものがあります。
峰岸徹、小山田宗徳、友竹正則、加茂さくらといった共演者もレベルが高い。
今一度 見直されていい作品だと思いますね。
「君よ知るや南の国」で検索すると、
熱心な真理ちゃんファンがアップしてくれたメドレーが聴けるのも驚きです。
(橘市 郎)


4月2日、大阪新歌舞伎座に行き、
細雪」の舞台稽古を見てきました。
初演以 来32年間、演出を担当している
水谷幹夫さんが声をかけてくれたのです。
彼は東宝演出部の同期生ですが、
それ以上にポン友として長いお付き合いをさせてもらっています。
麻雀に競馬といった共通の趣味が、
お互いの信頼感を高めたのですから不思議ですね。

私も彼も東京の下町生まれで、
江戸っ子気質のところが合うのかもしれません。
彼には気風の良さがあり、
賭け事をしてもフェアプレイといった感じで実にすがすがしいのです。
曲がったことが大嫌いで、人に優しいのですから
男性からも、女性からも好かれるのは当たり前です。

「細雪」は上演回数が1500回を越えたそうですが、
一貫して水谷さんが演出をしてきた事実は、
彼の人柄がこの作品を支えてきたことを
証明しているのではないでしょうか。
緞帳が上がった瞬間、「これが商業劇場のお手本だ」と
言わんばかりのセットが現れました。
大阪船場の屋敷の豪華さに圧倒されます。
上手に吊られた桜の枝が春の匂いを伝えるなかで、芝居が始まり、
四人姉妹の性格の違いが、短時間のうちに描かれます。
場面変わって芦屋の洋館。今度は桜の吊り枝が下手上にあり、
同じ春でありながら、雰囲気ががらりと変わります。
このように計算されつくされた舞台装置の中で、
ドラマが進行していく見事さはさすがと言うほかありません。
いろいろあって、最後に四人姉妹が
4台のピンスポットの中で語り合う場面は、
満開の桜の下、まさに幻想的でした。

台本が練りに練り上げられたものになっているので、無駄がない。
その上、人物の配置が実に美しく、どこを取っても絵になっている。
友人の演出した舞台という身びいきでなく、
本当に良く出来た芝居だと思いました。
四人の女優さんもそれぞれの性格を良く演じていて好演でしたし、
豪華な衣装を美しく着こなしていました。

私が最近企画している作品が商店街の小さな店とすれば、
この「細雪」は一流のデパートのような作品でした。
世の中にはいろいろなものが存在しているから楽しいのです。
どちらが良くてどちらが悪いというものではありません。
私は素直に水谷さんが名演出家になったことを喜びました。
この日、やはり長い間プロデューサーを努めて来られた
酒井喜一郎さんともお会いできました。

酒井さんは私の高校の先輩でもある方です。
そして、素晴らしい舞台装置をデザインした石井みつるさんは、
何と春秋座のオペラ「椿姫」の美術を担当してくれた方です。
方やお金をかけず、知恵を使って考えてくれたセット。
方や思う存分お客様のために、お金をかけたセット。
石井さんは言ってくれました。
「ああして苦労した仕事も楽しかったです。またやらせてください」
この石井さん、実は、「椿姫」を見てすっかり、
川越塔子さんのファンになってしまったそうです。
「声や美貌はもちろんのこと、
役を内面から、表現しているのが素晴らしい。
ヒロインの情 念が乗り移っているようでした」。

「細雪」の舞台装置をデザインした石井みつるさんが絶賛する
川越塔子さんのリサイタルは、
5月16日(土)
1ヶ月後に迫りました。どうぞお見逃しなく。

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